2021年01月01日 14:23 公開

香港終審法院(最高裁)は12月31日、中国政府の香港国家安全維持法(国安法)違反で起訴された香港メディア界の大物、黎智英(ジミー・ライ)氏(73)について、再び勾留すると決定した。

地元タブロイド紙・蘋果日報(アップルデイリー)創業者の黎氏は、中国政府を厳しく批判してきた。香港の民主化運動を支持する著名人の1人で、中国当局は国家安全保障を脅かすために外国と共謀したとして、訴追している。

黎氏は昨年8月に逮捕された2日後に保釈されたが、12月2日にあらためて、不動産詐欺など別件の疑いで逮捕され、勾留された。12月11日に国安法違反で起訴され、23日にまた保釈が認められた。

保釈後の黎氏は自宅軟禁状態に置かれていたが、保釈を認めた高等法院(高裁)の決定を不服とした検察が上訴していた。

香港終審法院は検察当局の上訴について2021年2月1日に審理するまで、黎氏を勾留するよう決定した。

終審法院の判事たちは判決文で、「(高等法院の)学識高い判事が本件で誤った判断をしたと考える、相当の理由がある」と述べた。国安法第42条の「国家安全保障を脅かす行動を容疑者や被告人が続行しないと考える、相当の根拠がない限り」裁判官は保釈を認めてはならないという規定を、根拠とした。

香港の民主活動家をめぐっては、広東省深圳の裁判所が12月30日、香港から8月にボートで台湾へ脱出しようとして中国当局に拘束された10人に、懲役7カ月から3年の実刑判決を言い渡したばかり。活動家たちは拘束後、中国大陸に移送され、中国の司法制度で手続きが進められた。

香港では英雄、中国では「裏切り者」

黎氏は服飾産業で最初に財を築いた後、メディア業界に参入。アップルデイリーの親会社・壱伝媒(ネクスト・デジタル)を設立した。

香港メディアに中国政府への恐怖感が広がる中、黎氏は紙面や著作物を通し、中国指導部を公に批判し続けてきた。

こうした姿勢から、黎氏は多くの香港市民から英雄視されている。だが中国本土では、国の治安を脅かす「裏切り者」とみられている。

12月初めの逮捕前にBBCの取材に応じた黎氏は、自分は当局の威圧に屈したりしないと述べていた。

「自分が(当局を)恐れるようになれば、向こうは最も手軽に、最も効果的に、こちらをコントロールできるようになるし、向こうもそれを承知している。威圧のやり口を倒すには、恐怖に立ち向かい、おびえないようにするしかない」

国安法とは

香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。

これにより香港では、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護された。

しかし、中国は昨年6月末に国安法を可決し、施行を開始。政府に対する「憎悪をあおること」や、中国当局者への制裁を外国に求めること、特定の抗議スローガンを使うことを、終身刑に処せられる可能性もある違法行為だと定めた。

これによって、香港の自治は後退し、反政府デモや民主活動家を処罰しやすくなった。

香港で逮捕された活動家が、中国大陸に移送され、陪審員のいない秘密裁判を受けることもある。大陸の公安警察が香港で活動することも合法化された。

国安法の施行以来、危険を恐れた複数の民主化グループが解散した。

中国政府は、民主派デモで揺れ続けた香港の安定回復につながるほか、香港と中国大陸との一体化が進むと、国安法の意義を擁護している。

(英語記事 Hong Kong media tycoon Jimmy Lai ordered back to jail