福知山は、光秀ゆかりの地だけでなく、「肉とスイーツのまち」として、その評価は年々高まっている。だが、コロナ禍に見舞われ、感染防止と観光誘致は相反する。とはいえ、せっかくの光秀ブームを生かさない手はない。そこで、相反する二つを同時に実現する施策を模索したわけだ。
 
 こうした視点から企画されたこの施策は、観光庁が推進する「あたらしいツーリズム」の実証事業に採択され、福知山市や各店、寺社仏閣、観光施設などの協力を得て実現することになった。
 
 さらに、コロナ禍克服のヒントとして特筆すべきは、「民間活力」だ。先に触れたように、アイデアやシステム、スタンプラリーの協力店舗など大半は民間である。そこに、観光庁や福知山市といった行政がバックアップするという理想的な関係が構築されている。

 福知山市の大橋一夫市長は「街づくりは、行政が旗を振って先頭を進んでいくのではなく、市民のみなさんが頑張ろうとするその意志にしっかり寄り添うことが重要だ。今回の非接触自動スタンプラリーは象徴的であり、民間活力が非常に大切だ」と意義を力説する。

 そして最終的に重要になるのは、各店舗の魅力だ。これが欠けていれば意味がない。ただ、大橋市長が自信ありげに語った「市民が頑張ろうとするその意志」の背景にあったのは、まさに個々の事業主のこだわりとポテンシャルにほかならない。

 福知山市の中心部にある新町商店街の一角に、カフェ「まぃまぃ堂」がある。こぢんまりとした店内は、電球の明かりがやさしく灯り、まさに癒しの空間といった雰囲気だ。手作りのケーキやクッキーのほか、ドリンクもゆず茶やすももソーダといった自家製のメニューが多数あり、原材料の多くはオーガニック(有機農産物)を使う。

 カフェである一方、量販品ではなく個性的な作家による靴や靴下のほか、フェアトレード(開発途上国で作製され、適正な価格で販売して生産者らの生活を守る)商品なども多数販売。また、戦時中の女性を描いた漫画「この世界の片隅に」の作者である、こうの史代さんオリジナルの「おみくじ」など、店内は驚きにあふれている。

 このカフェの店主は、地元で生まれ育った横川知子さん(51)だ。東京都内の大学に進学後、大阪府内の大手電機メーカーに就職したが、年々活気が失われる商店街を盛り上げ、子供のころからの夢だった洋菓子店を開きたいとの思いから、12年ほど前、かつて呉服や洋服店だった実家の空き店舗を活用してカフェを開いた。
こだわりの商品が並ぶカフェ「まぃまぃ堂」店主の横川知子さん=2020年12月、京都府福知山市(西隅秀人撮影)
こだわりの商品が並ぶカフェ「まぃまぃ堂」店主の横川知子さん=2020年12月、京都府福知山市(西隅秀人撮影)
 横川さんは、「都会の生活は刺激的でしたが、ただ流れていくという感じでしたね。福知山はそこそこ街があって、そこそこ田舎で、山や海も近い。田舎ならではの人と人とのつながりもあり、求め過ぎなければ、本当に住みやすい。お店をやるからには、いろんな方々の役に立つことをしたい」と、福知山の魅力に加え、オーガニックやフェアトレード商品を扱う意義を教えてくれた。