田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 米連邦議会の議事堂襲撃事件後に、会員制交流サイト(SNS)のツイッターがトランプ大統領のアカウントを「永久凍結」し、フェイスブックも同様の措置をとった。

 ネットの世界だけではなくリアルな国際政治の場でも議論が起きた。ドイツのメルケル首相は報道官を通じて、言論の自由を制限する行為は一企業の判断によるべきではなく、立法府の決めた法に基づくべきだとして両社の対応を批判した。フランスの閣僚らもメルケル首相と同様に批判し、ウェブサービスの基盤を提供する「プラットフォーマー企業」への規制も視野に入れるべきだと、より立ち入った主張をしている。

 だが、トランプ大統領に関する規制はさらに進展している。トランプ支持者が集うとされるSNS「パーラー」はネットの世界から姿を消した。アップルとグーグルは1月9日までに、それぞれのスマートフォン向けアプリストアからパーラーのアプリを排除していた。さらに、ウォール・ストリート・ジャーナルなどの報道によれば、パーラーのウェブサイトやデータを支えていたアマゾン・コムが支援を停止した。事実上の「消滅」だ。

 ツイッターやGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などが、トランプ大統領とその支持者への言論の機会を根元から奪った行為は、まさに大企業による私権の制限と言えるだろう。端的に不適切極まりない行為だと思う。

 ただし、冒頭のメルケル首相やフランスの閣僚たちの発言を、単なる「言論の自由」の観点からのみとらえるのは妥当ではないだろう。経済金融アナリストの吉松崇氏から教えを受けたが、これは巨大IT企業と先進国政府のどちらが表現の自由をめぐる規制の実権を握るかの争いと見るのが正しいのではないか。

 つまり、メルケル首相らは言論の自由をトランプ大統領やその支持者に認めるべきだ、という観点から発言したというよりも、実はその規制も含めて旧来の政府が担うのが正しいのだ、と言ったにすぎないのだ。
2020年1月6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ大統領支持者ら(ゲッティ=共同)
2020年1月6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ大統領支持者ら(ゲッティ=共同)
 この吉松氏の指摘は興味深い。このことは今までの「デジタル課税」をめぐるフランス、ドイツと大手IT企業との攻防戦を見ても傍証することができる。GAFAなどのIT企業は「拠点なくして課税なし」という各国の課税ルールの原則から多額の「税逃れ」をしてきた。例えば、ネットを経由して大手IT企業が、ある国の消費者にさまざまなサービスを提供して利益を得ても、その国に恒久的な拠点(本店、支店、工場など)がなければ課税されない。