このため自国に拠点を持っている国内企業と大手IT企業との間には、税負担の点で不公正が発生し、また国際競争力の点で国内企業が不利になってしまう。欧州委員会は国内企業の課税負担は23・2%であるのに対して大手IT企業は9・5%だと報告している。

 この税制上の大手IT企業への「優遇」を国際的な協調として是正しようという動きが、欧州勢には強かった。今までの国際課税のルール「拠点なくして課税なし」を変更して、IT企業に直接課税する提案や、また各国個別の対応が相次いで出されてきた。それに反対してきたのがトランプ政権であった。

 最近は妥協点を見いだそうという動きもあったが、基本的にトランプ政権のGAFAなどへの課税議論は消極的なものだった。米国では、共和党よりも民主党のほうが大手IT企業の独占力への規制に積極的であり、バイデン政権になればその動きが加速化すると言われてきた。

 現時点の大手IT企業の「トランプ封じ込め」ともいうべき現象は、発足まで秒読み段階に入ったバイデン政権への政治的「賄賂」に思えなくもない。そんな印象を抱いてしまうほど、あまりにも過剰な「言論弾圧」である。

 もちろん、メルケル首相らのIT企業への批判をトランプ寄りと見なすことはできない。一国の大統領の発言を封じてしまうような大手IT企業の危険性を世界に知らせることで、デジタル課税などの規制強化をしやすくしたいという思惑もあるのではないだろうか。

 米国の大統領選出をめぐっては、米国だけでなく日本でも、意見の分断や対立は激しい。トランプ大統領の業績について支持派は全肯定、反対派は全否定という大きな意見の隔たりも見られる。だが、誰が大統領であるにせよ、日本の備えを強めればいいだけではないか、と筆者は思う。

 バイデン氏は中国の環太平洋地域への覇権的介入に、トランプ大統領ほど関心がないかもしれない。対中国よりも対ロシア、つまり大西洋の方をバイデン氏は重視しているという見方が有力である。現在の日米の基本的な外交方針である「自由で開かれたインド太平洋構想」という、事実上の中国包囲網をバイデン氏は積極的に推進しないかもしれない。
米ワシントンで開かれた大規模集会で演説するトランプ大統領=2020年1月6日(AP=共同)
米ワシントンで開かれた大規模集会で演説するトランプ大統領=2020年1月6日(AP=共同)
 だが、他方で米国では党派を超えて中国への警戒が強まっているのも事実である。バイデン氏は同盟国との協調も訴えているのだ。ならば、日本が積極的にバイデン氏に働きかけ、韓国を除いた環太平洋の同盟諸国が共通して抱いている、中国の覇権主義に対する枠組みを進展させるべきである。

 米国に依存するのではなく、米国を日本の国益のために利用する。言うは簡単で行うのは難しいかもしれない。しかし、その気概がなくては、日本国の行方は危うい。