2021年01月14日 13:27 公開

ドナルド・トランプ米大統領が13日、暴徒による連邦議会議事堂の襲撃を扇動したとして弾劾訴追された。大統領のどんな発言が問題となっているのか。

ホワイトハウス近くでは6日、大統領選挙の結果に異議を唱える集会「Save America(アメリカを救え)」が開かれた。数千人が参加し、トランプ氏の言葉に聞き入った。

トランプ氏は70分にわたって演説。参加者に対し、議会に向かって行進するよう強く呼びかけた。議会では当時、ジョー・バイデン氏の大統領選勝利を認定する作業を議員らが進めていた。バイデン氏に対して拍手が送られた直後、襲撃が発生した

襲撃前の集会でトランプ氏が発した言葉は、同氏にとって2度目となった弾劾訴追において、中心的な役割を果たしている。

彼は何を言ったのか。6つの主な発言を取り上げ、最後にボルティモア大学のギャレット・エプス教授に解説してもらった。

「私たちは今回の選挙で勝った、しかも大勝利を収めた」

この発言は演説が始まって3分ほどたった時に出た。民主党はこれが扇動の開始点だとしている。ただ、この日の発言だけでなく、何週間にもわたって同様の発言をしてきたことを問題視している。

この言葉は、民主党が作成した弾劾訴追の決議文書に、以下のとおり引用されている。

「上下両院の合同会議までの数カ月間にわたって、トランプ大統領は繰り返し誤った声明を出し、大統領選挙の結果は大規模な不正の産物であり、米国民によって受け入れられたり、州や連邦当局によって承認されたりしてはならないと主張した。合同会議が始まる直前には、トランプ大統領は首都ワシントンのエリプス(ホワイトハウス前の公園)で群衆に向かって演説した。その際、『私たちは今回の選挙で勝った、しかも大勝利を収めた』という間違った主張を繰り返した」

決議文書は、共和党が掌握する上院に、弾劾裁判のため送られる。

「私たちは盗みを止める」

これは、バイデン氏の大統領選勝利に異議を唱える運動のハッシュタグを、トランプ氏がなぞったものだ。選挙結果が宣言された翌日に始まったこの運動は、ソーシャルメディアで勢いを増し、各地での集会開催につながった。

「私たちは決してあきらめない。決して敗北を認めない。そんなことは起きない」

バイデン氏の勝利を絶対に認めないと、トランプ氏がこれ以上ないほど明確に表明した発言だ。今回は支持者らにも同調を強く求めた。

トランプ氏はさらに、「盗みが行われたのに敗北を認めるなどということはしない。私たちの国はうんざりしている。もうこれ以上受け入れない」と続けた。

演説の途中、バイデン氏が大統領になることには異議が唱えられるべきだと訴える場面もあった。

「非合法の大統領が存在することになる。それが今後起こることで、そんなことを許してはならない」

「死に物狂いで戦わなければ、もはや国を失ってしまう」

弾劾訴追の決議文書に引用されたトランプ氏の言葉で、最も長いのがこれだ。上院で弾劾裁判が開かれた際には、彼の弁護士にとって、擁護が最も難しい発言となるかもしれない。

「彼はまた意図的に声明を出し、その文脈において、議事堂における法を無視した行動をそそのかし、予見可能だった事態を招いた。その声明は『死に物狂いで戦わなければ、もはや国を失ってしまう』などというものだった」

「平和的かつ愛国的に、各自の意見を届けよう」

トランプ氏を擁護する人たちは、この発言をとらえ、彼は決して扇動したことはなかったと主張している。

演説でトランプ氏は、「ここにいる全員がまもなく議事堂ビルに向かって行進し、平和的かつ愛国的に各自の意見を届けると知っている」と述べた。

ここでの言葉遣いは、戦闘や戦争に関する言葉が出てくる他の部分とは、大きく異なる。

「私たちは議事堂に向かう」

トランプ氏は「私たち」と言ったが、支持者らが議会へと短い距離を移動したのには加わらなかった。

演説でトランプ氏は、「私たちは議事堂に向かって歩き、勇敢な上院議員や下院議員に声援を送ろう。ただ、議員の一部に対しては大した声援はしないだろう」と発言した。

ギャレット・エプス教授の分析

――「扇動」とは法律上は何を意味するのか

憲法修正第1条の下では、「扇動」とは一定の要件を満たさなくては、犯罪に相当しない。

第一に、暴力を引き起こそうという意図が必要だ(その意図は状況から類推する)。

第二に、暴力行使の蓋然性が高くなくてはならない。

たとえば、私が繁華街に出かけて行って、銀行の前に立っている酔っ払い2人に、「この銀行を今すぐ強盗しようぜ」と言ったとしても、扇動したことにはならない。その2人が銀行を強盗する可能性が低いからだ。

扇動の要件を満たすには、切迫した暴力行為を引き起こす可能性が高くなくてはならない。この点がとても大事だ。

もしも私が「明日ここで集まって騒ぎを起こそう」と言ったとしても、それは扇動にはならない。というのも最高裁判例によると、事態が切迫せず、「騒ごう」よりも賢明な助言が効果を生む余裕がある場合には、発言に対する救済措置は発言になる。

このため、扇動の要件を満たすには、その発言は暴力を直接示す内容で、切迫した暴力行為を引き起こす可能性が高くなくてはならない。

――これが裁判所での訴訟だった場合、トランプ氏は一線を越えたと言えるか

刑事訴訟で扇動に有罪判決が出るのは、かなり珍しい。

6日の集会での大統領の発言に、その基準を適用すると、かなりきわどい判断になる。

支持者に向かって「議事堂へ歩こう」、「自分も一緒に行進する」と言っているので、すさまじく切迫した事態なのは明確だ。(ホワイトハウス近くの)エリプス公園からペンシルヴェニア通りを歩こうとする前に、もっと賢明な助言が有効になる猶予はない。

トランプ氏は支持者に「戦い」「力を示さなくてはならない」と言った。その一方で、議員たちに「平和的に」「愛国的に」お願いするのだとも言った。自分を守るために予防線を張ったのだ。最終的には、陪審判断になると思う。

訴追内容を棄却される権利が、彼にあるのか、確信がもてない。政府首脳には免罪の余地が大きくあるという意見もあるが、それが実際にどうなるのか分からない。

暴力を働く準備も心構えもある者たちが目の前の群衆の中にいることは、トランプ氏も明らかに承知していたし、暴力を制止しようとはまったくしなかった。

暴力を止めさせるため何もしなかっただけでなく、暴力が起きるべきだと強力に示唆していた。

取材:サム・キャブラル

(英語記事 Did Trump's words at rally incite the riot?