2021年01月16日 10:03 公開

米ウエストヴァージニア州の議員、フロリダ州の消防士、ユタ州の左翼活動家……。米連邦議事堂襲撃事件の容疑者はさまざまだ。6日の事件発生から約1週間が過ぎ、捜査当局が関与した疑いのある人々の特定と逮捕を進めている。

連邦捜査局(FBI)によると、新たに200人ほどの容疑者を特定し、100人以上が逮捕された。

首都ワシントンのマイケル・シャーウィン連邦検事は、扇動や共同謀議が関係する「深刻な重罪」について調べていると述べた。

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南北戦争時代の南部連合旗を持って議事堂に侵入したとみられる男性も14日、デラウェア州で逮捕された。旗を持った男性の写真は、ソーシャルメディアで急速に拡散されていた。


南部連合の旗は、奴隷制度の存続を求めた南部諸州で使われていたため、現在は人種差別のシンボルとして広く認識されている。

当局は男性をケヴィン・シーフリード容疑者と特定。同容疑者は息子ハンター容疑者とともに、デラウェア州ウィルミントンの裁判所に出頭した。親子は、入場が制限された建物への侵入や、秩序を乱す行動をした疑い。

他方、議事堂内で自身の動画を撮影し、ツイッターに投稿した左翼活動家ジョン・サリヴァン容疑者(26)も逮捕された。入場が制限された建物への侵入や、秩序を乱す行動をした容疑などがかけられている。

同容疑者はメディアに対し、暴動を「記録する」目的で暴徒と共にいただけだと説明。ただ、同容疑者の宣誓供述書によると、記者証は所持していないという。


裁判資料は、サリヴァン容疑者が「このクソを焼き尽くせ」と言っているのが、自ら撮影した動画に記録されているとしている。

同容疑者はメディアの取材に、自分はBlack Lives Matter(黒人の命も大事)運動の支持者だと主張する一方、極左集団アンティファとは無関係だとした。

司法省は10日、体を拘束するプラスチック製の道具を上院の議場に持ち込んだとみられる男性2人を逮捕したと発表した。2人とも写真に撮影されていた。


同省によると、多数のプラスチック製のひもを持っていたエリック・ギャヴァレク・マンチェル容疑者はテネシー州で、警察が使用するプラスチック製の手錠を持っていたラリー・レンデル・ブロック容疑者はテキサス州で、それぞれ逮捕した。秩序を乱す行動をした疑いなどがあるという。

ブロック容疑者については、元妻が写真を見て通報した。

FBIはまだ数十人の氏名や居場所の特定を進めており、広く情報提供を呼びかけている。

また司法省によると、11日までに約14万点の動画や写真が一般から提供されたという。


司法省は、扇動的共同謀議に関わったとみられる人物を訴追する意向を示している。連邦刑法では、米政府の転覆を謀る行為が扇動的共同謀議にあたるとされ、最長で禁錮20年という厳しい刑罰の対象となる犯罪とされている。

オハイオ、ミネソタ、ケンタッキーなどの州の連邦検事らは、暴動に加わった州民を訴追する方針を明らかにしている。


訴追された主な人物

ジェイク・アンジェリ被告(Qシャーマン)

本名はジェイコブ・アンソニー・チャンスリーで、「Qシャーマン」を自称。陰謀論「Qアノン」の有名な信奉者で、アリゾナ州グランデール在住。33歳。

Qアノンは、「世界の政財界やマスコミにはびこる悪魔崇拝の小児性加害者に対し、トランプ大統領は秘密の戦争を繰り広げている」というのが主な内容。


角と熊の毛皮のかぶりものを着け、赤白青のフェイス・ペイントをし、上半身裸で茶色いズボンという姿で連邦議会議事堂に入る姿がメディアで報じられた。秩序を乱す行動をした疑いなどがかけられている。

ABCニュースによると、チャンスリー被告は刑務所で支給された食べ物を拒否。その後、判事が「チャンスリー被告が求めている厳格なオーガニック食を供給すべき」と認めた。

チャンスリー被告は弁護士を通じ、暴動中に「平和的で規則に則した行動を取っていた」として、トランプ大統領からの恩赦を求めている。

ダグ・ジェンセン被告(Qアノン)

議事堂内でアフリカ系アメリカ人の警官が1人で暴徒に対峙し、上院本会議場の入り口と反対方向へ誘導したように見える映像が、広く拡散され、警官が称賛されている。この動画で、「Qアノン」のシンボルが描かれたTシャツを着て、侵入者集団の先頭にいるのがアイオワ州デモイン在住、41歳のダグ・ジェンセン被告だ。


動画には、被告が警官を追い立てる様子が記録されている。警察の公務執行の妨害など、5つの罪状で起訴された。

ニック・オクス被告(プラウドボーイズ)

首都ワシントンから自宅のあるハワイ州に戻ったところを、ホノルルの空港で逮捕された。

議事堂内でたばこを吸っている自身の写真をツイッターに投稿していた。不法侵入などの罪状で起訴された。

プラウドボーイズは、反移民を掲げる男性だけの極右団体。2016年に設立された。昨年の大統領選の候補者テレビ討論会では、トランプ氏が「プラウドボーイズ、引き下がって待機せよ」と呼びかけて話題になった。

リチャード・バーネット被告

ナンシー・ペロシ下院議長の執務室で、机に足をのせて座る写真が撮影されていた。執務室から持ち出した封筒を手にしている場面も、議事堂の外で写真に撮られていた。


不法侵入や窃盗などの罪に問われている。アーカンソー州出身、60歳。地元メディアは、銃の所持権を支持する団体に関わっており、トランプ氏が立証されていない選挙不正を訴えた「盗みを止めろ」集会に参加していたと伝えている。

ロバート・キース・パッカー容疑者

「アウシュビッツ強制収容所」と書かれたパーカーを着て、議事堂内に乱入した様子が撮影されていた。秩序を乱す行為をした容疑などがかけられており、ヴァージニア州で逮捕された。


パーカーに書かれた文字を見て、ユダヤ人の大規模虐殺を実行したナチスドイツの理念を一連の抗議行動の背後に感じ取った人も少なくなかった。

デリック・エヴァンス被告

ウエストヴァージニア州の州議会議員(共和党)。就任から1カ月もたっていない。

自転車用とみられるヘルメットをかぶって議事堂になだれ込み、その模様を自撮りした。フェイスブックのライブストリームでは、「私たちは入るところだ」、「やった! デリック・エヴァンスは議事堂に入った!」などと述べていた(のちに削除)。

州議会は同容疑者の除名の検討を開始。同容疑者は辞任を表明した。不法侵入などの容疑がかけられている。

ほかにも

これらのほか、議事堂襲撃の際、トランプ氏の名前が書かれた帽子をかぶり、ナンシー・ペロシ下院議長の名前が書かれたプラカードを指差して写真に納まっていたフロリダ州の消防士や、警官に消火器を投げつけたとされるフィラデルフィア州の元消防士も逮捕された。


上院の議場のバルコニーからぶら下がっているところを撮影されたアイダホ州の男性や、下院の演台を持ち出し笑顔で撮影に応じていたフロリダ州の男性も逮捕されている。

警官から盗んだ疑いの装備や毛皮などを身につけて議事堂内で撮影された、34歳男性も逮捕された。このアーロン・モストフスキー容疑者は、ニューヨーク・ブルックリンの郡裁判所判事の息子という。

「ナンシー・ペロシのオフィスのドアを突破した」と話すビデオを投稿したとされる、テキサス州の生花店経営者も逮捕された。この女性はかつて、同州ミッドランド市長に立候補していた。

アメリカ代表水泳チームの1人として2度にわたりオリンピックで金メダルを得たクリート・ケラー容疑者は、五輪代表チームのジャケットを着て議会に乱入した様子が撮影されていた。

ヴァージニア州ロッキーマウントの非番警官2人も、議会敷地内への不法侵入や不法行為などの疑いで逮捕された。

(英語記事 Man holding Confederate flag in Capitol arrested