2021年01月19日 12:27 公開

ロシアへの帰国直後に当局に拘束された野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)に対し、現地の裁判所は18日、30日間の勾留を命じた。

裁判は、ナワリヌイ氏が勾留されている警察署内で臨時で行われた。これに対しナワリヌイ氏は、今回の判決は偽物だと批判し、支持者に抗議デモを呼びかけている。

すでに警察署前には多くの支持者が集まり、「(政府は)みっともない真似をするな」、「プーチン(大統領)は辞職しろ」などと叫んでいる。

アメリカや欧州連合(EU)もロシア政府に対し、ナワリヌイ氏の釈放を求めている。

ナワリヌイ氏は昨年8月、ロシア・シベリアを旅客機で移動中に体調が悪化。同国の病院を経て、ドイツ・ベルリンの病院で治療を受けていた。ドイツ政府は9月、ナワリヌイ氏に対して神経剤ノビチョクによる毒殺が図られた「明確な証拠」があると発表した。

ナワリヌイ氏は、ロシア当局が自分を暗殺しようとしたと主張している。ロシア政府は一切の関与を否定しているものの、複数の調査報道がナワリヌイ氏の主張を支える結果となっている。

臨時の裁判

ナワリヌイ氏は現在、モスクワ郊外ヒムキの警察署に勾留されている。署内に設置された臨時裁判所の判事は、同氏が執行猶予中の出頭義務に違反したとして、2月15日までの勾留を命じた。

ナワリヌイ氏については以前の詐欺罪などに対する3年半の禁固刑が猶予中だが、実刑判決に切り替えるかを判断するため、1月29日に次の審理が開かれることになった。

これとは別に、ロシアの検察は新たに別の詐欺罪で同氏を訴追しようとしている。

ナワリヌイ氏はかねて、こうした疑惑は政治的に捏造(ねつぞう)されたものだと主張している。今回の判決も「偽物の正義」だと批判。事情聴取は「無法の極み」だったと述べた。

警察署から発表した動画(ロシア語)でナワリヌイ氏は、「恐れないでほしい。私のためではなく、自分たちのため、未来のために、街へ出て抗議してほしい」と呼びかけた。

寒さの中、警察署前には200人ほどの支持者が集まり、ナワリヌイ氏の即時釈放を求めた。

ナワリヌイ氏はその後、警察署からモスクワ市内の刑務所へと移送された。

インタファクス通信によると、同氏の弁護士を務めるヴァディム・コブゼフ氏は、この「違法な」判決に控訴すると述べている。

また、ロシアの人権問題などを監視しているOCDインフォは、18日にナワリヌイ氏支持者やジャーナリストなど70人以上がロシア国内で拘束されたと伝えた。

欧米各国が釈放要求

欧州理事会のシャルル・ミシェル議長やフランスやイタリア政府などが、ロシアを批判し、同氏をすぐに釈放するよう求めている。ただし、制裁や懲罰的行動には触れていない。

20日に就任するジョー・バイデン次期米大統領の国家安全保障問題担当補佐官となるジェイク・サリヴァン氏は、「クレムリン(ロシア政府)によるナワリヌイ氏への攻撃は、人権侵害というだけでなく、意見表明したいロシアの人々を侮辱するものだ」と批判した。

20日まで米国務長官のマイク・ポンペオ氏はツイッターで、「ロシアによるアレクセイ・ナワリヌイの逮捕決定を深く憂慮している。自信のある政治リーダーは競合する声を恐れないし、政敵への暴力や、違法な逮捕を必要と考えない」と書いた。

イギリス政府も、ナワリヌイ氏の逮捕を「深く心配している」とコメントし、「ロシア当局は恐ろしい犯罪の被害者を責めるのではなく、どうしてロシア国内で化学兵器が使われるに至ったのかを捜査すべきだ」と呼びかけた。

事態の展開は

ナワリヌイ氏は昨年夏、シベリア・トムスクからモスクワへ向かう機内で倒れ、緊急着陸した現地の病院を経て、ベルリンで治療を受けた。旧ソ連が冷戦中に開発した猛毒の神経剤ノビチョクが使用されたと、欧州の複数の研究機関が特定した。

ナワリヌイ氏は9月に退院し、療養を続けていた。最近では腕立て伏せやスクワット体操ができるようになるまで、回復したと話していた。さらに、ロシア当局が自分を毒殺しようとしたのはウラジーミル・プーチン大統領の指示によるものだとしつつ、帰国するつもりだと表明していた

帰国すれば直ちに逮捕されると警告されながら、ナワリヌイ氏は17日、ベルリン均衡の空港からロシアのポベーダ航空機に乗ってモスクワへ向かった。

到着予定のヴヌウコヴォ空港では支持者が治安部隊に拘束される騒ぎが起きていた。

同じ便には多くの報道陣も同乗。BBCロシア語のアンドレイ・コゼンコ記者も乗っていた。着陸直前に機長が「技術的な理由」で、着陸予定地がヴヌウコヴォ空港からシェレメティエヴォ空港に変更されたとアナウンスしたため、乗客の間に動揺が広がった。

飛行機が着陸するとナワリヌイ氏は支持者や報道陣に、「自分は正しいと承知している。何も恐れていない」と述べた。入管審査の警備員には、「長いことお待たせしましたか」と話しかけた。

警察に拘束すると告げられ、もし命令に従わないならば強制的に拘束すると警告されると、ナワリヌイ氏はドイツから付き添っていた妻のユリアさんに口付けをしてから、拘束に応じた。顧問弁護士が同行許可を強く求めたが、認められなかった。

昨年12月には調査報道サイト「ベリングキャット」などが、ナワリヌイ氏を長年監視していたとされるロシアの連邦保安庁(FSB)の工作員3人が、同氏と同時期にトムスクにいたと報道。さらに、ナワリヌイ氏が身元を伏せてFSB工作員に接触し、神経剤ノビチョクを使った自分への攻撃の詳細を聞き出した様子を伝えた。

ナワリヌイ氏はFSB工作員コンスタンティン・クドリャフツェフ氏との通話を録音し、オンラインで公表。その中で工作員は、ノビチョクをナワリヌイ氏の下着に入れたと話している。

こうした報道をプーチン大統領は「トリック」だと批判。ナワリヌイ氏はアメリカ情報機関の支援を受けていると主張している。

(英語記事 Putin critic Alexei Navalny to be kept in custody