ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表、元在沖縄米海兵隊政務外交部次長)

 いよいよジョー・バイデン政権が誕生するが、筆者は、これからの台湾の未来に大きな不安を感じている。

 2017年1月に発足したドナルド・トランプ政権の4年間で、米国と台湾(中華民国)の関係はより緊密なものとなった。

 直近では今月9日に、マイケル・ポンぺオ国務長官が、それまで米国政府が「自主規制」していた米台間当局者との接触制限を撤廃したと表明した。

 ポンペオ氏によれば、「当省は数十年間にわたり外交官や軍人、他の当局者の台湾側との意思疎通で複雑な内部の規制を作り出してきた」と述べた上で、この規制はそれまでの「中国の共産党政権をなだめるために行っていた」と説明し、「もはや存在しない」とした。

 そうした背景もあり、今月にはケリー・クラフト米国連大使が、1971年の台湾の国際連合脱退以来、初めて訪問することが予定されていた。しかし、出発する前日の12日に、ポンペオ氏は「バイデン政権移行の一環」という理由で全ての海外出張を中止とし、クラフト氏の訪台が実現不可能となってしまった。

 この裏には、バイデン氏の思惑があったと筆者は見ている。「バイデン政権がポンペオ氏が進める米国高官の台湾訪問に難色を示している」と語るのは、次期政権に近しい関係者である米戦略国際研究所(CSIS)のボニー・グレイザー氏だ。彼女によれば「政権移譲直前で行われたポンペオ氏による『自主規制撤廃』やクラフト大使の訪台に、バイデン氏は不満に思うだろう」と述べているからだ。

 筆者を含む親台湾の専門家たちは、このクラフト氏の台湾訪問中断は中国にとっての「勝利」だと解釈している。

 そしてこの「規制撤廃」と「訪台中止」という真逆の(矛盾した)流れは、トランプ政権の台湾政策を象徴している。つまり米台関係を大きく進めさせようとする一方で、むち打ち症になるほどの急ブレーキをかけている。思うに、こうした運転は周囲のドライバーへの影響が大きく、注意が必要だ。

 もっとも米国と台湾の関係は、トランプ政権発足前の16年12月に民主進歩党の蔡英文総統がお祝いの電話をしたとき以来、それまで米台間の関係が中断して以降40年間何もなかった状況から大きく進展した。それは大歓迎すべきことで、トランプ氏によるこの4年間の数多くの実績も評価すべきだろう。

 それでも、まだ2つの重要かつ大きな課題が残ってしまった。それは「合衆国大統領の台湾訪問の実現」と「台湾の国家承認」だ。
台湾総統府で会談した蔡英文総統(右)とアザー米厚生長官=2020年8月、台北(台湾総統府提供・共同)
台湾総統府で会談した蔡英文総統(右)とアザー米厚生長官=2020年8月、台北(台湾総統府提供・共同)
 去る10月12日、筆者は国家安全保障会議の幹部に、あくまで助言としてトランプ氏の「台湾の国家承認」を進言していた。

 海兵隊の後輩でもあるその幹部に筆者は、理想的な時期として大統領選投票日の11月3日以前、とにかく任期中に行うべきだと提言し、投票日前であれば次の3つのシナリオが考えられると説明した。

 まず投票日であれば、トランプ氏の台湾承認は米国政治に大混乱を招き、野党である民主党は民主主義の理念を重視して台湾を支持するか、それとも経済的な利害を追求して中国を重視するかをはっきりさせることができる。また、民主党陣営は大パニックになり、トランプ氏の勝利もあり得る。

 一方で、もしトランプ氏が台湾を承認したことで最悪中国が台湾を攻撃した場合、この武力行使は米国の台湾関係法に抵触し、米国が台湾を守ることになる。米国民は大統領を支持し、選挙で勝利することが考えられた。