だが、ペンス氏は20世紀以降の前例を重視して、不正疑惑のあった州の選挙結果を突き返すことをしなかった。下院は民主党多数であり、上院の共和党にも選挙結果を覆すことに反対の議員も多かった。

 そこで選挙結果を調査する特別委員会を設置するという案も浮上した。その案が合同会議に諮られたまさにそのときに、議事堂周辺の抗議者が騒ぎ始め、一部が議会内に乱入、審議は一時停止した。そして不幸にも死者まで出る事態になったのだ。

 このような事態になったため、再開された合同会議では、「バイデン勝利」の選挙結果に異議を唱えられなくなり、バイデン氏の勝利が確定。その後に暴動を扇動したとして、まもなく任期が切れるトランプ氏に対する弾劾訴追までされる結果となった。

 これは弾劾裁判で「有罪評決」された大統領は再び大統領選に立候補する資格がなくなるためだろう。逆に言えることは、2024年の大統領選にトランプ氏が再チャレンジすることを恐れているからだ。

 前記のようにトランプ氏は共和党大統領としては異例の全人種的な幅広い支持を得ている。また、選挙の敗北が確定したとされてから、数週間で2億ドル以上を集めたことも、敗北して退任する大統領としては前例がない。

 そして、各種調査などによると、共和党支持者の7割以上、民主党支持者の一部を含む米国民の3分の1が、あの選挙は不正だったと信じていることが分かっている。

 だからこそ、1月6日にはワシントンに多数が集まったのである。その目的はペンス副大統領や共和、民主両党の一部の議員らに選挙不正を暴くような議事を進めてもらうためであった。

 結果的に連邦議会での暴動は、行き過ぎた行動をする一部の粗暴な集団が暴徒化したのであって、トランプ氏が暴力沙汰を望んだわけではない。

 にもかかわらず、こうした事態になった理由として、警察が議会に普通の見学者のように呼び入れたため、デモ隊の中に黒人暴動関係を含む極左暴力集団の関係者も紛れ込んでいたという情報もある。ワシントン周辺は民主党支持者が多く、それは警察も例外ではない。

 このように、トランプ氏と彼の支持者は、罠にはめられたとの見方もあるのだ。ゆえに、一部の暴力沙汰がなく、大規模な抗議行動になっていれば、不正選挙の証拠の調べ直しは実現していたかもしれない。
米ワシントンの連邦議会議事堂に乱入したトランプ大統領の支持者らと話す警察官=2021年1月6日(ロイター=共同)
米ワシントンの連邦議会議事堂に乱入したトランプ大統領の支持者らと話す警察官=2021年1月6日(ロイター=共同)
 だが、それもトランプ氏本人が、沈静化を図ったために実現しなかった。今回の連邦議会議事堂占拠事件については、トランプ氏が煽ったかのような報道が相次いでいるが、そもそもトランプ氏は平和主義者であることは明白だ。なぜなら、在任中の4年間、新たな戦争や紛争をしなかった。そのトランプ氏が自分のために流血の惨事を起こしたくなかったのは、当然だろう。