ただ、民主主義を守るため不正な権力に対して声を上げることは、それこそ米国の建国以来の精神でもある。暴力的な手段は許されないが、不正選挙疑惑が解明されずに大統領に就任するバイデン氏に異議を唱える行為は決して非難されるものではない。

 一方で、バイデン政権になれば、トランプ政権と違い、専門官僚を重視するため安定した外交が行われ、中国の軍事的・経済的脅威の封じ込めにはかえってよいのではないかと考える人は多い。だが、そのような専門官僚の発想こそ、マニュアルにとらわれ、グローバル経済で中国を強大化させ、米国民を苦しめた原因そのものではないだろうか。

 マニュアルというか過去の前例を大事にすることが安定した民主主義を発展させるという考え方はある。ペンス氏も同様に考えて合同会議で強権を発動しなかったのだろう。

 しかし、真の民主主義とは過去の前例が新しい時代に合わなくなったとき、国民の選んだ政治家が、それを破壊して新しい状況に即したマニュアルを作ることにこそある。それをトランプ氏は行なったのである。

 その結果として中国の対米投資(という名の米国乗っ取り)は行い難くなり、第5世代(5G)移動通信システムに対する規制も強化された。また、クアッド(QUAD)と呼ばれる日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による南シナ海などにおける中国海軍封じ込めのスキームもでき上がった。

 さらに、パレスチナ国家の樹立容認や中国大陸との関係強化のために積み重ねられた前例も、トランプ政権はあえて無視した。そのため、中東和平も台湾の国際社会復帰も、一歩手前まできていたのは事実だ。だが、今回の政権交代を踏まえて、いずれも中途半端になってしまう懸念が強まっている。

 これと同様に日本にとって非常に重要なQUADも、徐々に弱体化していくのではないかという強い不安を感じざるを得ない。

 こうした中で、日本はトランプ氏のレガシーである中国からの投資や5Gに対する規制だけでなく、QUADと北大西洋条約機構(NATO)を部分的にでも結び付けて強化することを本気で考えるべきだろう。そのような発想が日本の官僚から出てくるかは疑問だが。

 トランプ政治の真意は、官僚主義との闘い、そして米国の建国精神の復活にあったと繰り返し記した。ただ、それが広く国民に支持されていることを表しているのが、議会議事堂占拠事件直後の世論調査結果であり、実際トランプ氏の支持率は上昇している。

 調査会社イプソスなどの今月中旬の世論調査によれば、トランプ支持者の92%は、彼が4年後の大統領選に再チャレンジすることを望んでいる。共和党内でも強力なトランプ支持者は4割未満だが、それでもトランプ氏が再出馬することに6割近い人が賛成しているのだ。
米ワシントンで開かれた大規模集会に参加するトランプ大統領=2021年1月6日(AP=共同)
米ワシントンで開かれた大規模集会に参加するトランプ大統領=2021年1月6日(AP=共同)
 このようにトランプ氏の根強い支持の背景にあるのは、先に記したように、やはり不正投票疑惑を払拭できていないバイデン政権の正当性の希薄さにほかならない。

 かつてのオバマ政権などのように民主党が主導する政権は中国を利するだけでなく、米国民の不満も再燃し、遅かれ早かれ行き詰まるはずだ。そして再びトランプ氏の政治が評価される日がくるのだろう。