清義明(フリーライター)

 今夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催に、またも暗雲が垂れ込めている。

 政府は開催を進めていくとの立場を崩していないが、最新の共同通信による世論調査では、開催に否定的な意見が約80%となっている。

 昨年末にかけて新型コロナウイルス感染者が激増し、その対策が後手に回ったとして菅義偉(すが・よしひで)内閣の支持率が急落したこともあり、政府内部からも世論を踏まえた上での慎重論がチラホラと出てきてさえいる。

 はてして、東京五輪の開催は不可能なのか。筆者の結論から言えば、東京五輪は条件付きではあるが十分に開催可能だ。その理由は大きく2つある。

 一つ目は、ワクチンがもうすでに世界での流通を開始し、接種が進んでいることだ。

 もちろん、五輪開催の夏までに日本国内の集団免疫が完成するほど接種が進むのは無理だろう。だが、選手と関係者全員にワクチン接種することはさほど難しいことではない。

 イスラエルでは1月20日時点で、国民の約3割(約270万人)がワクチンを接種し、実際にその効果も良好なことが報告されている。米国の大統領に就任したジョー・バイデン氏は、政権スタートから100日以内、つまり5月の初旬までに1億回分のワクチン接種をするとも表明している。

 東京五輪の場合、33競技339種目の選手数は約1万人。関係者と報道陣など含めれば、この何十倍の人数が競技場に集まることになる。だが、この人数に絞ってワクチン接種することは、ワクチンの供給の展望を考えると不可能ではない。なお、日本では2月末には、ワクチンの接種が開始される。

 こと選手に関しては、国の威信をかけて行われるスポーツ大会であるから、それぞれの国で接種することで問題ないだろう。その他の関係者は、ワクチン接種、または抗体証明書があることを義務付ければ特に問題はないはずだ。

 また、マイクロソフトやオラクルといったIT系の有志連合がスマートフォンアプリを使った世界共通の国際電子証明書「ワクチンパスポート」の開発を開始している。おそらく今後はPCR検査と隔離期間を義務付けている、条件付きの入国緩和措置「ビジネストラック」や「レジデントトラック」もこのワクチンパスポートの所持によってスムーズになるだろう。
検品されるファイザーの新型コロナワクチン
検品されるファイザーの新型コロナワクチン
 そして五輪が開催できる二つ目の理由が、現在でも世界各地で実際に国際的なスポーツ大会が行われているという点だ。サッカーであれば先月まで、カタールのドーハでアジア最強のクラブチームを競う「アジアチャンピオンズリーグ」が開催されていた。

 「厳しい制限がありましたが、実際に世界各地からスポーツチームが集まって大会をして、何も問題は発生しなかったのは確かです」と出場チームの担当記者は言う。

 もちろんPCR検査で陰性だった人だけが渡航でき、入国後も選手たちは入国後に外部と接触しないようにホテルなどに隔離措置される。しかし、練習は普通に行うことができ、試合もほとんど通常通りだった。