2021年01月21日 4:27 公開

米首都ワシントンで20日、大統領就任式が行われ、民主党のジョー・バイデン氏が第46代大統領に就任した。カマラ・ハリス氏は、アメリカ初の女性でアフリカ系でアジア系の副大統領になった。バイデン新大統領はホワイトハウスに入ると早速、執務室に入り、パリ協定復帰や連邦施設でのマスク義務化などを命令する大統領令に署名した。

バイデン新大統領は宣誓後、「アメリカをまたひとつにまとめて、立て直すため、全身全霊をかける」と述べた上で、「私たちはまたしても、民主主義が貴重だと学ぶことになった。民主主義は壊れやすい。そして皆さん、今この時には、民主主義が打ち勝った」と話した。

就任式にマイク・ペンス前副大統領は出席したが、ドナルド・トランプ前大統領はこれに先駆けてフロリダ州に移動しており、欠席した。現職大統領が新大統領の就任式に欠席するのは1869年以来。式典にはバラク・オバマ元大統領やジョージ・W・ブッシュ元大統領も出席した。

就任式は慣習通り、連邦議会議事堂の前に設けられた壇上で行われた。しかし、今月6日の議事堂襲撃に引き続き極右勢力などが式典を攻撃する可能性を警戒し、2万5000人以上の州兵が会場を警備する異例の式典となった。

攻撃への警戒に加え、新型コロナウイルスの感染対策のため、議事堂前の国立公園ナショナル・モールは立ち入り禁止となり、代わりにアメリカでパンデミックのため亡くなった40万人以上を追悼する星条旗が並べられた。通常の大統領就任式では、このナショナル・モールに数十万人の観衆が集まる。

ジョン・ロバーツ最高裁長官の司式で大統領として宣誓したバイデン氏は、就任演説で「歴史と希望の日」だと述べ、自分に投票した人だけでなくすべてのアメリカ人のための大統領になるという公約を繰り返した。

バイデン新大統領は、「歴史的な危機に直面する」今のアメリカで、白人至上主義や国内テロと対峙すると約束した上で、「お互いを敵ではなく隣人として扱い」、「今からやり直しましょう」と呼びかけた。

新大統領はさらに、「uncivil war」を終わらせなくてはならないと強調した。「civil war」は英語で「内戦」やアメリカの南北戦争を意味するほか、「civil」には「礼儀正しい、礼節ある」などの意味もあり、「uncivil」はその反対を意味する。

「私たちは、民主主義と真実に対する攻撃に直面している」と述べ、「真実を守り、うそを打倒する責務が私たちにある」、「恐怖ではなく希望の、分断ではなく団結の、暗闇ではなく光の、アメリカの物語を一緒に書いていきましょう」と語った。

さらに、今後は全員が団結してパンデミックを克服していくのだとと強調し、新型コロナウイルスで亡くなった40万人以上のアメリカ人とその家族のために、祈りを捧げた。

就任式では、6日の議会襲撃において暴徒の集団と単独で対峙(たいじ)し、暴徒を上院本会議場から遠ざけたことで、ペンス前副大統領や大勢の上院議員を守ったとたたえられている議会警察のユージーン・グッドマン警官が、カマラ・ハリス氏と夫ダグラス・エムホフ氏を会場へ先導した。

就任式の後には連邦議会で、上下両院の両党幹部が新しい正副大統領を歓迎した。上院はジョージア州の決選投票で民主党の新人2人が当選し、ハリス副大統領が上院議長になったことで1票差で民主党が多数となり、上下両院とも民主党が僅差で掌握することになった。

ホワイトハウス前で車を降り

バイデン新大統領とハリス新副大統領はその後、それぞれの伴侶やブッシュ夫妻、クリントン夫妻、オバマ夫妻と共に、アーリントン国立墓地を訪れ、無名戦士の墓に花輪を手向けた。

新しい大統領がホワイトハウスに向かう際は、ペンシルヴェニア通りの沿道に観衆が並ぶのが慣例だが、今回は攻撃とパンデミックの両方を警戒する必要があるため、観衆のいない通りを、ブラスバンドや独立戦争時代の兵士を装った鼓笛隊、警官隊などが先導する車列の行進になった。バイデン氏とハリス氏のそれぞれの出身大学からも、ブラスバンドが参加した。

厳重警備体制の中、バイデン大統領はホワイトハウス前で専用車を降りた。妻ジルさんと手をつなぎ、周囲に手を振ったりあいさつをしたりしながら、家族やシークレットサービスに囲まれて、ホワイトハウスに歩いて入った。

ホワイトハウスの敷地に入る前、オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は米NBCニュースの記者にどういう気持ちかと聞かれ、「うちに帰ってきた気分だ」と答えた。

バイデン夫妻が無事にホワイトハウスに入ると、全米各地の人たちが新大統領就任を祝って参加する「バーチャル全米パレード」が始まった。民主党は昨年夏の全国党大会でも各州の代表をバーチャルにつないで、話題となった。

ハリス副大統領と「セカンド・ジェントルマン」の夫ダグ・エムホフ氏も、ホワイトハウスの前で車を降りて、家族と共に周囲に手を振りながら、歩いてホワイトハウスに入った。

ハリス副大統領はこの後、連邦議会に戻り、上院議長としてジョージア州の新人議員2人と、自分の後任となるカリフォルニア州代表の議員1人の就任を司った。

トランプ氏は欠席

大統領就任式を欠席したトランプ氏と妻メラニアさんは午前8時ごろにホワイトハウスを離れ、アンドリューズ空軍基地を経由して、フロリダ州の私邸兼リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」へ移動した。

トランプ氏は空軍基地では支持者を前に、「自分たちは見事な業績を達成した」と述べた上で、「新政権に素晴らしい幸運と素晴らしい成功を願っている。素晴らしい成功を収めると思う。本当にすごいことができるだけの基盤ができているので」と述べた。

さらに支持者たちには、「また何らかの形で戻ってくるから。よい人生を送って。またすぐに会おう」と呼びかけた。

ペンス氏はこの空軍基地での見送りには参加しなかった。

任期が終わる直前にトランプ氏は、140人以上に恩赦や減刑を与えた。その中には、元戦略顧問のスティーヴ・バノン被告も含まれていた。バノン被告は、トランプ政権の公約だったメキシコ国境の壁建設費用をめぐる詐欺罪で2020年8月に起訴された

トランプ氏はフロリダ州に移動したが、連邦議会襲撃について「反乱を扇動」したとして下院に弾劾訴追されており、上院は近く弾劾裁判を開始する見通し。共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は19日、議会を襲った暴徒は「大統領に挑発された」と言明している。

米大統領が2度にわたり弾劾訴追されるのは前例がない。

バイデン新大統領は初日に何を

バイデン新大統領は就任初日に、トランプ政権の様々な政策を覆す17の大統領令に署名した。その一部は次の通り。

バイデン氏は新大統領としてオーヴァル・オフィス(大統領執務室)に入ると、記者団を前に、パリ協定復帰やマスク義務化、人種格差解消の大統領令に署名した。

バイデン氏はさらに、トランプ前大統領が自分あてに「とても温かい手紙を書いてくれた」と記者団に明らかにした。その上で、「個人的な手紙なので、本人と話すまでは内容について話さないが、温かい内容だった」と述べた。

(英語記事 Biden inauguration: New president sworn in amid Trump snub