ここには確率的な事象への無関心がある。バランスを欠いたのは見出しだけで、記事の中身では中立的な議論がなされているという指摘もあるだろう。だが、その種の批判は妥当ではない。記事の中身のバランスがいいのならば、見出しもバランスよくすればいいだけなのだから。

 「日本で接種が予定されているワクチンは新型コロナに対してかなりの効果があり、副反応があったとしても確率的にわずかなものである」という話が、いつの間にか「副反応があるので、ワクチン接種はするよりも慎重になるか、しないほうがいい」という話になってしまっていないだろうか。

 このような「反ワクチン」的な報道や世論の一部の動きに対しては、政府も何もしていないわけではない。ネットなど情報発信に優れている河野太郎行政改革担当相をワクチン担当相に指名したのは、マスコミの報道姿勢への対抗でもあるだろう。

 ところで、「第3次補正予算にはGoToトラベルが入っているが、今はそれよりも優先する政策があるので予算組み替えが必要だ」という発言を考えてみる。GoToトラベルたたきは今も盛んであり、「悪」の象徴のように扱われている。

 GoToトラベルの経済効果はかなり顕著であった。感染拡大が抑制され(感染がゼロになるわけではないことに注意)、経済の再起動に重点を置くときに必要な政策である。

 政府の非公式な経済効果試算では約1兆円。明治大の飯田泰之准教授は規模は示していないが、いくつかの統計データからGoToトラベルの経済効果が大きいことを指摘している

 現状では経済の活発化に伴い、感染も次第に再拡大していく恐れが大きい。医療体制支援の拡充や、一人一人の感染対応が重要なのは変わらない。

 今は緊急事態宣言の真っただ中なので、感染抑制に人々の視点が集まってしまいがちだが、第3次補正予算が順調に審議、可決され、予算が執行されるのは緊急事態宣言が解除になっている時期である。

 最悪、再延長されたとしても感染拡大期が無限に続くわけもない。感染拡大期が終わって、経済活動を刺激するときに、このGoToトラベルの予算を確保していることは十分な「備え」になる。
参院本会議で答弁する河野太郎行政改革担当相兼ワクチン接種担当相=2021年1月22日、国会(春名中撮影)
参院本会議で答弁する河野太郎行政改革担当相兼ワクチン接種担当相=2021年1月22日、国会(春名中撮影)
 しばしば、野党やマスコミは「緊急事態宣言は後手にまわっている」と菅首相を批判してきた。だが、昨年の補正予算の審議で、予備費を計上したときに、その金額が巨大である、国会を軽視しているなどと批判を展開してきた人たちがいた。現在の緊急事態宣言の中で、予備費から飲食店への一時協力金が出ているが、この人たちは「備え」を否定していたことになる。

 予備費を批判した同じ口で「自粛と補償は一体」と言う人も多い。まさに反政権が優先しているだけで、国民の生活目線とはとても言えないだろう。