2021年01月26日 11:40 公開

アメリカのジョー・バイデン大統領は25日、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人たちの米軍入隊を禁じたドナルド・トランプ前大統領の措置を取り消す大統領令に署名した。

トランスジェンダーの入隊禁止は、トランプ前大統領が就任1年目に発表したもの。

ホワイトハウスは、「トランスジェンダーの軍人が、性自認を理由に除隊や分離される可能性はなくなる」との声明を発表した。

性やジェンダーに関する軍の状況についての研究で知られる非営利団体「パーム・センター」が分析した米国防総省のデータによると、2019年時点でのトランスジェンダーの現役軍人は8980人だった。

「バイデン大統領は、性自認が軍務を行ううえでの障壁になるべきではなく、アメリカの強さはその多様性の中に見いだされるものだと考えている」と、ホワイトハウスの声明は付け加えた。

新たに国防長官に就任したロイド・オースティン元陸軍大将は声明で、「国防総省はトランスジェンダーだと表明する個人に、性自認に基づいて入隊し、軍務に就く資格を確保するため、直ちに適切な政策措置を講じる」と述べた。

「合衆国軍は国内外の敵から同胞のアメリカ市民を守るのが仕事だ。我々が全ての同胞の市民を代表して活動できるなら、その使命をより効果的に達成できると信じている」

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トランプ氏の政策を覆す

トランプ前大統領は2017年、軍事専門家から意見を聞いたとし、「とてつもない医療コストと混乱」がトランスジェンダーの入隊拒否を決めた理由だとツイートした。

トランスジェンダーの入隊は2019年4月から禁止となった。すでに入隊していた軍人は職務を継続できる一方で、新規入隊はできなくなった。

当時の国務長官だったジム・マティス氏は、この禁止措置を性同一性障害と診断された人や、生物学的な性と性自認が一致しない場合に限定するよう、内容を修正した。

バイデン大統領はトランスジェンダーの入隊禁止措置を撤回するつもりだと、繰り返し主張していた。

20日の大統領就任式に先立ち、現政権のロン・クレイン大統領首席補佐官は、バイデン氏が大統領としての最初の1週間を「公平性を促進させ、有色人種や、十分なサービスを受けていないその他のコミュニティーを支援する」ことに充てるつもりだと述べていた。

バイデン氏は就任直後から、トランプ氏の打ち出した政策を覆す大統領令に次々署名している。

バイデン氏はすでに、メキシコ国境の壁建設の停止や、イスラム教徒の多い国からの入国制限を撤廃する大統領令に署名。人種の公平性の改善に向けた取り組みを始めている。

トランスジェンダーと女性の権利

BBCのメガ・モハン、ジェンダー&アイデンティティー担当編集委員は、トランスジェンダーの権利の擁護は、バイデン氏の昨年の選挙キャンペーンで早くから取り上げられていた政策だったと指摘する。

大統領選での勝利を受け、バイデン氏は昨年11月、トランスジェンダー・コミュニティーに語りかけた。新政権は「あなた方を見て、あなた方に耳を傾け、あなた方のために闘う。あなた方の安全のためだけでなく、これまで否定されてきた尊厳と正義のためにも」とツイートした。

就任後、バイデン氏は「性自認あるいは性的指向に基づく差別の防止と阻止」と題した大統領令に署名した。女性向けの避難所やスポーツ競技、医療は、女性と自認する人を差別してはならないというものだ。

この大統領令は、性別とは「生物学的性別」だというトランプ前大統領の定義を事実上覆すものとなった。同時に、女性のスポーツ競技はもはや平等な競争の場ではないといった懸念の声も生むこととなった。

実際、大統領令には陸上競技に関する明確な記述はない。大学やオリンピックレベルの大会で競技するトランスジェンダー選手は、すでに個々の小委員会から特別な要件を満たすよう求められている。

バイデン政権のスタンスは明白だ。弱い立場の人たちのために人権に関する決定を下すというものだ。しかし、女性の権利はトランスジェンダーの権利と相反するものだと主張する人たちがいる中、複数の弱者グループを満足させるのは難題だろう。

(英語記事 Biden overturns Trump transgender military ban