2021年01月27日 14:22 公開

アンソニー・ザーカー北米担当記者

ドナルド・トランプ前大統領が首都ワシントンを去って1週間ほどたった。だが、連邦議会の共和党に影を落とし続けている。25日には、トランプ氏の弾劾を求める決議が下院から上院に送られた。

トランプ氏は連邦議会議事堂の襲撃事件で同氏支持者らによる反乱を扇動したとして、下院で弾劾訴追の決議を受けている。この決議への態度を表明する初の投票が26日に上院で行われ、共和党議員50人のうち45人が、弾劾裁判の手続きをやめるよう求めた。

弾劾訴追の決議を退けるよう主張するランド・ポール上院議員は投票後、決議は「(上院への)到着と同時に死んだ」と宣言した。

彼はおそらく正しい。

上院の弾劾裁判でトランプ氏を有罪にし、その後に連邦政府の公職への立候補を防ぐ採決をするには、共和党議員が17人以上、民主党議員50人に同調する投票をする必要がある。


26日の投票では、証拠を検討することについてさえ、賛成したのは5人(ミット・ロムニー、リサ・マーコウスキ、スーザン・コリンズ、ベン・サス、パット・トゥーミーの各議員)しかいなかった。

他の議員は、大統領を退任した人を弾劾裁判にかけることはできないと主張している。

シェリー・ムーア・キャピト議員(ウェストヴァージニア州)は投票後に声明を発表。「弾劾決議を却下すべきとした私の今日の投票は、弾劾が公職に就いている人を罷免させるものという事実に基づいている」とした。

「憲法は、民間人を弾劾する権限を議会に与えていない」

民主党議員らはこの主張を、トランプ氏の振る舞いに対して判断を示すことを避けるための、都合のいい方便だと受け止めるだろう。

民主党議員らはまた、退任した大統領が弾劾裁判の対象になった前例はなくても、汚職疑惑のかかった閣僚を辞任後に弾劾裁判にかけた例が19世紀にあったことを指摘するだろう。

共和党内の空気の変化

こうした説明や正当性の主張はあるにしろ、26日の手続き的な投票は、改めて1つのことを明確に示した。トランプ氏に3週間前の議事堂襲撃事件の責任を問うことへの気運が、共和党内で弱まっているということだ。

襲撃事件からほどなくして、上院でトランプ氏に最も近かったリンジー・グレアム議員は、トランプ氏の行動が「問題だった」とし、同氏の業績は「汚された」と話した。

共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、トランプ氏の弾劾を求める下院の動きを「喜んでいる」と報じられた。先週には、議事堂を襲った暴徒について、大統領によって「うその情報を与えられ」、「あおられた」と述べた。

だが、グレアム氏もマコネル氏も26日の投票では、弾劾裁判を終わらせるよう求めた。

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トランプ氏の過失をめぐって共和党の見方が変わっている様子は、ケヴィン・マカーシー下院院内総務の発言の揺れに最もよく表れていると言えるだろう。

マカーシー氏は2週間前に下院で、トランプ氏には「暴徒による襲撃の責任がある」と発言。下院がトランプ氏に対し、正式に問責決議をするよう勧告した。

ところが先週になって、トランプ氏が「扇動した」とは思わないと主張。その数日後には、反乱を招いた政治環境が生まれたことに対し、「この国の全員に何らかの責任がある」と述べた。

トランプ氏批判の議員に矛先

一方、トランプ氏を批判し、その後も姿勢を変えていない共和党議員には、罰を与えるべきだとする声が党内で高まっている。

下院でトランプ氏を強く非難し、弾劾決議に賛成した共和党議員10人のうちの1人となったリズ・チェイニー氏に対しては、党の要職を解任させようとする動きが出ている。

来年の下院選で再選を目指す議員らの中には、党の予備選で別の候補をぶつけると脅されている人もいる。

上院は今後2週間、弾劾裁判については動きがない状況が続く。一方、トランプ氏の弾劾を上院に求める下院議員らと、トランプ氏の弁護団は、弾劾裁判に向けて準備を進める。

共和党上院議員らの現在の姿勢を考えれば、民主党に残された唯一の戦略は、既成事実化している無罪投票をできるだけ気まずいものにすることだろう。

民主党は上院議員100人全員に対し、今月6日の議事堂襲撃事件で怒れる暴徒らから逃れた時に感じた、恐怖や混乱、怒りを思い起こさせようと、最大限のことをするはずだ。

民主党はまた、大統領選の結果を2カ月にわたって疑問視し続け、議会が選挙結果を認定する日に議事堂近くで抗議集会を開いたトランプ氏に対し、襲撃事件の責任を負わせようとするだろう。

そして、歴史と有権者がトランプ氏を有罪にするのを、民主党は期待することになる。たとえ上院がそうしなくても。

(英語記事 Why convicting Trump just got a lot harder