2021年01月28日 12:28 公開

欧州連合(EU)は27日、英製薬大手アストラゼネカに対し、イギリスの工場で生産している新型コロナウイルスワクチンをEU加盟国に供給するよう強く求めた。

アストラゼネカは先に、EUには今年第1四半期(1~3月)に約束した供給分のごく一部しか提供できないと発表。欧州工場における生産問題が原因としている。

これに対してEUは激しく反発。EU域外の工場で生産した分で不足を補うべきだと主張している。

両者は27日に問題解決に向けて協議した。欧州委員会のステラ・キリアキデス保健担当委員はツイッターで、「配達スケジュールが不透明な状態が続いている」ことを残念に思うと述べた。

また、「解決策を見いだし、EU市民に迅速にワクチンを届けるため、今後もアストラゼネカと協議していく」とした。

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EUはかねて、ワクチン接種事業の遅れで批判を受けている。

何が問題になっている?

EUは昨年8月にアストラゼネカと3億回分のワクチンと、1億回分の追加オプションについて先行契約を結んだ。

アストラゼネカのワクチンはまだEUで認められていない。しかし欧州医薬品庁(EMA)は29日にも認可する見通しだ。

EUは認可後すぐにワクチンの供給が始まり、3月までに8000万回分が加盟27カ国に行き渡るとみていた。

しかしアストラゼネカは、オランダとベルギーにある工場で生産遅延が発生していると発表。パスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)によると、生産は「予定から2カ月遅れている」という。

ワクチンがどれくらい足りないのか、公には発表されていない。ロイター通信によると、第1四半期には予定より6割少ない3100万回分が供給される見通し。

すでに、イタリアなどが同社を提訴すると示唆している。

EUの主張は

EUのキリアキデス委員は27日の記者会見で、問題が生じていないアストラゼネカのイギリス工場も、EUへのワクチン供給を行う対象として契約に含まれていると述べた。

「EU加盟27カ国は、アストラゼネカが契約を履行する必要があることで一致している」

一方、アストラゼネカのソリオCEOは26日、伊紙ラ・レプブリカの取材で、契約は「最善を尽くす」ことを約束したもので、ワクチン供給の期限を守るよう定めたものではないと話した。

キリアデス委員は、ソリオ氏の説明は「間違いで、受け入れられない」と反論。アストラゼネカはワクチン生産の状況を「オープンかつ透明性のあるもの」にすべきだと述べた。

また、EUは「早い者勝ち理論」は受け入れないと話した。

「隣の精肉店であれば通用するかもしれないが、こうした契約、特に我々が結んだ先行購入契約では認められない」

EUはアストラゼネカを合わせた5社と、計23億回分のワクチン供給契約を結んでいる。

しかし、米ファイザーと独ビオンテック(6億回分)も、EUへのワクチン供給に遅れが出ている。ファイザーによると、ベルギーの工場で生産能力の拡大工事を行うため、向こう数週間の供給が遅れるという。

これについては仏同業サノフィが、7月からビオンテックに生産設備を貸し出し、年末まで1億2500万回分の生産を支援すると発表した。

このほか、米モデルナからも1億6000万回分を確保している。

一連の遅延により、スペインのマドリード州ではワクチン接種事業が2週間完全停止している。カタルーニャ自治州でも、供給不足が危ぶまれている。

EUは域内のワクチン不足をまかなうため、加盟国内で生産されたワクチンの輸出を制限する可能性があると示唆している。


(英語記事 EU demands AstraZeneca vaccine doses made in UK