田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 新型コロナ危機が1年以上も続く中で、ポストコロナというべき経済論点が注目を浴びている。それはデジタルトランスフォーメーション(DX)を志向した社会の変革や「新しい生活様式(ニューノーマル)」というものではない。コロナ危機以前からある二つの問題、「財政危機」と「バブル崩壊」という論点だ。今回は特に前者の問題について書いておきたい。

 例えば、朝日新聞は昨年末、社説で「追加経済対策 財政規律を壊すのか」「来年度予算案 財政規律のたが外れた」と連発して、菅政権の第3次補正予算と令和3年度予算案の批判を展開した。最近では毎日新聞も「コロナ下の財政見通し 現実に向き合わぬ無責任」という社説で「暮らしを守る支出は惜しんではならない。だが、それに乗じて財政規律を緩めるのは許されない」と批判している。

 バブル崩壊のほうは、ここ数日の米国株式市場でのゲームストップ株を中心とする、株価の乱高下が、「米国含めて先進国の株価は実体経済と乖離(かいり)したバブルではないか」という懸念をいっそう強めている。

 「財政危機」も「バブル崩壊」も新型コロナ対策で、先進国を中心にして世界が積極的な財政政策と金融緩和を継続していることを背景にしている。日本もそうだが、医療支援制度の拡充やワクチン接種の体制の構築、そして各種給付金や資金援助などで巨額のおカネが政府から出されている。

 国際通貨基金(IMF)の最新の論説では、「世界全体の財政支援は2020年12月末時点で14兆ドル近くに達した。2020年10月以降、約2・2兆ドル増加したことになる。内訳は追加支出あるいは(規模はそれより少ないが)歳入の見送りが7・8兆ドル、政府保証、融資、資本注入が6兆ドルを占める」と指摘されている。

 日本はなぜか「緊縮スタンス」という批判を浴びることがあるが、国内総生産(GDP)比でみても国際水準でみてもトップクラスの成績である。
 ただし、それだけの巨額でも新型コロナ危機では、飲食や観光業その関連業種を中心にダメージは大きく、またそこで働く非正規の人たち、特に女性層に強く悪影響が出てしまっている。特定の部門に悪影響が強く出て、それが経済全体を低迷させているという図式は、日本だけでなく世界の主要国で共通している。