
2021年02月03日 11:51 公開
ミャンマー国軍によるクーデターをめぐり、国内で抵抗の動きが広がっている。最大都市ヤンゴンでは住民らが鍋やフライパンをたたき、車のクラクションを鳴らすなどして反発している。
一部の主要都市では医療スタッフらがストライキを計画。活動家たちは、市民の抵抗を示す抗議行動の実施を呼びかけている。
しかしこうした反発が見られる中、国軍はがっちりと権力を掌握しているようだと特派員たちは指摘する。
国軍は1日、「軍が国家の権力を掌握した」とし、今後1年間にわたる国家非常事態を宣言した。
その数時間前には、与党・国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問(75)や複数の政治家が拘束された。それ以来アウンサンスーチー氏は姿を見せておらず、解放を求める声が高まっている。
同氏の所在に関する公式声明は出ていない。しかし、NLDの匿名の情報筋によると、同氏とウィン・ミン大統領は自宅軟禁されているという。
首都ネピドーでは議員100人以上が軍によって宿泊施設に監禁されていたが、現在は解放されている。
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軍はNLDが得票率80%以上で大勝した昨年11月の総選挙で不正行為があったと主張している。
NLDは選挙結果を受け入れるよう軍に求めているが、軍は新たな選挙管理委員会を設立し、警察本部長を任命した。
これまでの選管の調べでは、選挙での不正行為を示す証拠は見つからなかった。
1962年の軍事クーデター以降、ミャンマーでは2011年まで軍事政権が続いた。2015年に民政移管後初の総選挙が行われ、民主化運動の指導者だったアウンサンスーチー氏が率いるNLDが大勝し、民主化を進めてきた。
ミャンマーで今何が起きているのか
1日のクーデター後、兵士がすべての主要都市をパトロールし、夜間外出禁止令が発令されるなど、国内は静かだった。クーデターで遮断された通信システムは2日朝までに復旧した。
しかし2日夜になると、ヤンゴン市内ではクーデターへの抵抗を示す車のクラクションや鍋などをたたく音が響き渡った。
若者や学生グループも市民の抵抗を示すキャンペーンを呼びかけた。キャンペーンのフェイスブックページには10万以上の「いいね!」が集まった。
公立病院で働く医師たちは、アウンサンスーチー氏の解放を求め、3日から仕事を休む方針だとした。
医師たちは国軍のクーデターへの抵抗を示す黒いリボンを身につけている。
https://twitter.com/soezeya/status/1356519661249028098
少なくとも1人の医師が「このようなクーデターは全く容認できない」として退職した。
サガイン地方にあるモンユワ病院の麻酔科医ナイン・トゥー・アウン氏(47)は、「国や国民のことを考えていない軍事独裁者の下では働けないので退職した。これが彼らに対する私の最善の態度だ」とBBCビルマ語に述べた。
抵抗を示すキャンペーンに加わった医師ミョー・テット・ウー氏は、「我々は独裁者や選挙で選ばれていない政府を受け入れることはできない」とロイター通信に述べた。
「彼らはいつでも我々を逮捕できる。我々はそれに立ち向かうことに決めた。(中略)全員病院へは行かないと決意した」
政府トップとなったミン・アウン・フライン国軍総司令官に権力が移り、財務省、保健省、内務省、外務省などの大臣ら11人が入れ替わった。
フライン氏は2日の初の閣議で、国軍による政権奪取は「不可避」だったと繰り返した。
米国が制裁を示唆
アメリカのジョー・バイデン大統領はミャンマーへの制裁を復活させると警告。国軍が「民意を覆す」べきではないと述べた。その後、米国務省はミャンマーでの出来事はクーデターであり、同国への援助を見直すと発表した。
国連やイギリス、欧州連合(EU)もミャンマー軍による政権奪取を非難した。
イギリスのナイジェル・アダムズ外相は今週後半に予定されていたアウンサンスーチー氏との電話会談が無事に行われることを願っていると述べた。
欧米諸国からのこうした警告がどれほどの影響をもたらすのかは不明だ。クーデターを指導した人々は国際社会からの制裁を見越して、自分たちの計画に盛り込んでいただろう。
これまでミャンマーへの国際的な介入に反対してきた中国は、ミャンマー軍とアウンサンスーチー氏側に「相違を解決」するよう求めた。中国国営の新華社通信は今回の動きを「内閣改造」だと伝えた。
カンボジアやタイ、フィリピンなど近隣諸国は、ミャンマーの「国内問題」だとしている。