2021年02月03日 17:33 公開

イギリスで医療従事者などを支援するため巨額の寄付金を集めて有名となったサー・トム・ムーア退役大尉(100)が2日、死亡した。娘が公表した。大尉は新型コロナウイルスに感染し、先月31日から入院していた

娘のハナ・イングラム=ムーア氏とルーシー・テイシェイラ氏は、父親の人生最後の1年は「まさに驚くべきものだった」と述べた。

そして、父親との最後の数時間を共に「笑って泣いて」過ごしたと明かした。

遺族によると、大尉は数週間前から肺炎の治療を受け、先週になってウイルス検査で新型ウイルス感染症COVID-19陽性と判明した。肺炎治療の薬を服用していたため、COVID-19ワクチンは接種できなかったという。

エリザベス英女王は、ムーア大尉が「全国民と世界中の人たちを励ましてくれた」と哀悼の意を表明した。

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英首相らも哀悼の意

バッキンガム宮殿の報道官は、「女王陛下は昨年、キャプテン・サー・トムとご家族との面会を非常に楽しんでいた。陛下と王室メンバーはご家族に思いを寄せている。大尉は全国民と世界中の人たちを励ましてくれた」と述べた。

ボリス・ジョンソン英首相は声明で、「キャプテン・サー・トム・ムーアは真の意味で英雄だった。第2次世界大戦下の暗い日々の中で彼は自由のために戦い、この国の戦後最も深刻な危機に直面した際には我々全員を団結させ、我々全員を励まし、人間の精神の勝利を体現した」と述べた。

「彼は国を鼓舞するだけでなく、世界にとっての希望の光となった。我々は彼の娘のハナとご家族に思いを寄せている」

ロンドン・ダウニング街10番地の首相官邸では、弔意の半旗が掲げられた。ジョンソン氏はイングラム=ムーア氏にお悔やみを伝えたという。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、「とてつもなく悲しい知らせだ。キャプテン・トム・ムーアは国難の時に他者を第一に考え、何百万人もの人の希望の光となった。イギリスは英雄を失った」とツイートした。

アメリカのホワイトハウスは、「我々はイギリスと世界と共にキャプテン・サー・トム・ムーアをしのんでいる。彼は自分の人生と行動を通じて何百万人もの人を元気づけた」とツイートした。

娘たちの声明

ムーア大尉の娘たちは声明で、「私たちの親愛なる父の死をお伝えするのは非常に悲しい」、「ハナ、ベンジー、ジョージアが父のベッド脇で、ルーシーがフェイスタイム越しに、父の人生の最後の数時間を過ごせたことをとてもうれしく思っている」と述べた。

「数時間の間、父とおしゃべりをして、子供のころや素晴らしい母親のことを思い出していた。私たちは共に笑って泣いて過ごした」

「父の人生の最後の1年は、まさに驚くべきものだった。父は元気を取り戻し、夢に見てきただけのことを経験することができた」

「父は短い間に本当に多くの人から思いを寄せてもらった。彼は素晴らしい父親であり、祖父だ。私たちの心の中で永遠に生き続ける」

娘たちは、英国民保健サービス(NHS)から父親が受けた治療を「驚くべきものだった」と振り返った。

スタッフは「揺るぎなくプロフェッショナルで親切で、思いやりがあり、おかげで私たちは想像していた以上に長い年月を父と過ごすことができた」とした。

47億円以上を集める

大尉は昨年4月、イギリスで最初のロックダウンが敷かれる中、新型ウイルス対策の最前線に立つ医療機関やスタッフを支援するため、英東部ベッドフォードシャーの自宅の庭を100往復して寄付金を募り、話題となった。

当初は4月30日の100歳の誕生日までに1000ポンドを集めることを目標としていたが、150万人以上の賛同者から計3279万4701ポンド(約47億1600万円)が寄せられた。

大尉は「キャプテン・トム」の愛称で親しまれるようになった。

大尉は英国民の気持ちを高めたと称賛されたほか、「明日はいい日になる」という言葉がソーシャルメディアでトレンドになった。

昨年4月30日の100歳の誕生日に名誉大佐の称号を与えられた

また同7月にはウィンザー城の中庭で、エリザベス女王からナイトの爵位が与えられ、「サー・トム」となった。同12月には英ブリティッシュ・エアウェイズの招待バルバドスに家族旅行に出かけた

ムーア大尉は北部ウェストヨークシャー・キーフリー出身。第2次世界大戦で陸軍に志願した。インドやビルマに派遣され、大尉まで昇進した。

(英語記事 'Hero' fundraiser Capt Sir Tom Moore dies aged 100