
2021年02月04日 11:28 公開
ミャンマー国軍によるクーデターについて、アントニオ・グテーレス国連事務総長は3日、国際社会が協力して確実に失敗に終わらせるよう呼びかけた。
ミャンマーの国家権力を掌握したと宣言した国軍は、アウンサンスーチー国家顧問(75)率いる与党・国民民主連盟(NLD)が得票率80%以上で大勝した昨年11月の総選挙で、不正行為があったと主張している。
グテーレス事務総長は、総選挙の結果を覆す行為は「容認できない」とし、クーデターを指導した人物に、これが国を治める方法ではないことを理解させなければならないと述べた。
国連安全保障理事会はクーデターに対する声明について各国と調整していたが、常任理事国の中国がクーデターを非難するような文言をはねつけ、まとまらなかった。
「全く容認できない」
グテーレス氏はミャンマーで憲法による秩序を再確立するよう求めた。そして、この問題について、国連安保理が結束することを望んでいると述べた。
「我々は、このクーデターを確実に失敗に終わらせるようミャンマーに十分な圧力をかけるため、国際社会の主要人物全員を動員できるようあらゆる手を尽くすだろう」と、グテーレス氏は述べた。
「選挙結果や民意を覆すことは、全く容認できない」
「これが国を治める方法でもなければ、前に進む方法でもないと、ミャンマー国軍に理解させられることを望んでいる」
中国が声明案に反対
欧米諸国はクーデターを容赦なく非難している。しかし、2日の安保理の緊急会合ではクーデターをめぐる声明案が協議されたものの、常任理事国の中国が反対したため、合意に至らなかった。
中国は長年、国際的な監視からミャンマーを守る役割を担ってきた。クーデター後は、制裁や国際的圧力は事態を悪化させるだけだと警告している。
中国はロシアと共に、イスラム教少数民族ロヒンギャに対する軍事的弾圧をめぐる国連での批判から、何度もミャンマーをかばっている。
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アウンサンスーチー氏を訴追
国軍は1日、「軍が国家の権力を掌握した」とし、今後1年間にわたる国家非常事態を宣言した。
その数時間前には、アウンサンスーチー氏や複数の政治家が拘束された。警察はその後、無線機を違法に輸入し使用していたとして、アウンサンスーチー氏を刑事訴追した。同氏は15日まで勾留される。
アウンサンスーチー氏と権力の座を追われたウィン・ミン大統領は拘束されて以降、音信不通となっている。
同氏の所在は不明なままだが、首都ネピドーの自宅で軟禁されていると報じられている。
クーデターを率いたミン・アウン・フライン国軍総司令官が政権トップとなり、新たな閣僚に軍出身者ら11人を任命した。
ソーシャルメディア・プラットフォームが国の「安定回復を妨害している」として、軍がフェイスブックの遮断を命じたとの報道もある。
3日には、ユーザーからフェイスブックにアクセスできないとの声があがった。クーデターへの抗議行動を呼びかけるフェイスブックページには数万件の「いいね!」が集っていた。
活動家たちが抵抗呼びかけ
ミャンマーではこれまでのところ、大規模な抗議の兆候はほとんど見られない。2日と3日の夜には、主要都市ヤンゴンで住民らが車のクラクションをならしたり、鍋などをたたいたりして抗議した。
1日のクーデター後、兵士が街中をパトロールし、夜間外出禁止令が発令されるなど、多くの場所は静かだ。
しかし複数の病院では抗議行動が起きている。医療従事者は仕事を停止したり、国軍のクーデターへの抵抗を示す黒いリボンを身につけるなどしている。
抗議者たちはアウンサンスーチー氏の釈放を求めている。
抵抗を示すための赤や黒のリボンを身につけ、映画「ハンガー・ゲーム」でおなじみの3本指を立てて抗議した。このサインは昨年タイで起きた反政府デモでも使われた。
オンラインでは、アウンサンスーチー氏率いるNLDへの支持を示すため、多くの人がソーシャルメディアのプロフィール写真を同党のイメージカラーの赤に変えた。