今村浩(早稲田大社会科学総合学術院教授)


 毀誉褒貶(きよほうへん)という表現は、まさにこの人のためにあるのかと思わせたドナルド・トランプ氏が退任し、ジョー・バイデン氏が、第46代米国大統領に就任した。

 昨年11月初旬の大統領選投票日から就任までの80日余りは、例年であれば、それまでの大統領選一色の報道から一転して、米国政治が、世界の新聞1面の見出しやテレビニュースのトップを飾ることはなくなる。

 せいぜいが、米国内で新政権の人事が取り沙汰される程度で、世界の耳目を引きつけることはない。ところが、異例づくしだと言われたトランプ時代は、最後の最後まで、前例のない幕切れとなって、全世界の注目を集めた。政権移行期を振り返り、新政権の今後にも若干説き及びたい。

 去る1月6日に、首都ワシントンの連邦議会議事堂で起こったことが、将来の歴史にどう記録されるのだろうか。例えば、これから生まれてくる子供が高校生ぐらいになって習う歴史の教科書にどう記述されることになるのかは、まだ分からない。

 特筆すべきは、この日、上下両院合同会議の議長を務めるマイク・ペンス副大統領が、各州からの結果を破棄して覆してほしいというトランプ氏からの要請を拒んで、集計手続きを粛々と進めようとしていたことだろう。トランプ氏を常に擁護してきたミッチ・マコーネル上院院内総務も、たとえ選挙に不正があったとしても、結果を変えるほどのものではないと述べた。

 両氏が、最後の最後になってからではあっても、トランプ氏と袂(たもと)を分かったことは、称賛されてよい。ペンス氏を副大統領に選んだことは、トランプ氏の最も成功した人事と言えるかもしれない。

 むろん、多数の共和党議員が異議を申し立てるであろうから、何時間も要することになると予想されてはいた。しかし、そうしたことは、過去に何度も起こってきたのであり、異例ではない。2001年にも、05年にも、そして前回の17年の際にもあった。とりわけ05年には、僅差ではなかったにもかかわらず、民主党議員による異議申し立てが行われた。

 そして今年1月6日の集計確定手続きは、暴徒の乱入により中断されはしたものの、同夜には再開され、結局無事完了したのである。何も天が落ちてきたわけでもあるまいに、とは外国人ゆえの感想だろうか。
2021年1月6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ氏の支持者ら(ゲッティ=共同)
2021年1月6日、米ワシントンの連邦議会議事堂の前に集結するトランプ氏の支持者ら(ゲッティ=共同)
 思い起こせば4年前、トランプ氏は、共和党が上下両院で多数を占める中、第45代米国大統領に就任した。強い嫌悪と深い懸念が抱かれる一方で、その破天荒なポピュリスト的指導力への期待も抱かれながら。

 その任期は、1月20日の就任式典を待たずして、6日の連邦議会議事堂乱入事件によって、実質的な終焉を迎えてしまった。前日の5日に行われたジョージア州の上院決戦投票で、民主党が2議席を手中に収めて、上下両院で事実上の多数派となったその日でもある。