2021年02月09日 11:22 公開

音声SNS「クラブハウス」が8日夜、中国大陸でつながらなくなった。中国国内でのオンライン上の閲覧を規制する「グレート・ファイアウォール」で遮断されたのではないかとの懸念が上がっている。同アプリ上では先週末、数千人の中国人ユーザーが香港問題などを自由に議論していた

招待制アプリの「クラブハウス」ではテキストではなく音声を使ってチャットする。

最近までは米シリコンバレーの技術愛好家らが主に利用していたが、ここ数週間で中国での人気が爆発的に伸びていた。

中国当局はインターネット上で公開される内容を大幅に制御しており、検索結果の検閲や、多くのトピックに関する投稿の表示を制限するなどしている。

しかし、クラブハウス・ユーザーのチャット音声は録音されないことから、プライバシーをある程度確保することができる。

同アプリが中国からも使えていた週末には、多くの中国人ユーザーがこうした性質を利用し、香港での抗議活動やウイグル人の扱い、中国と台湾の緊張の高まりなど、オンライン上で滅多に議論されることのない話題を交わしていた。

中国と台湾の参加者が議論

BBCの記者たちは、同アプリのあるチャットルームで、中国と台湾からの数千人の参加者がセンシティブな話題を礼儀正しく議論しているのを発見した。中国政府は台湾を分離している領土とみなしているが、台湾側は主権国家を自認している。

参加者たちは、民主主義の是非や物議を醸している香港での政策、ウイグル人に対する政策、台湾と中国の統一などのほか、双方の故郷を始めて訪れた時の話も共有していた。

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この音声チャットアプリの使用は無料だが、現在は招待された人のみ参加できる。

しかし中国のユーザーは最大77ドル(約8000円)を支払い、Eコマース(電子商取引)サイトから同アプリへの招待を入手していると、英紙フィナンシャル・タイムズは伝えている。

こうした中、中国ウォッチャーたちは、中国大陸でこのようなオープンで検閲のない会話がいつまで許されるのか疑問視していた。

8日には、数千人ものソーシャルメディア・ユーザーから一斉に、クラブハウスがオフラインになったとの報告が上がった。

これまでのところ、このアプリに関してや、中国での今後の展開について、公式声明は出ていない。

昨年4月に立ち上げられたクラブハウスは招待制で、iPhone上でのみ利用が可能なため、ユーザーの拡大は限定的だった。

一方で、こうした特別感もまた魅力の一つとなり、シリコンバレーのテクノロジー関係者や投資家、ジャーナリストなどをすぐに引き付けた。その後は大物セレブも加わり、多くの人が参加を熱望する特別なイメージを作り上げた。

米電気自動車(EV)メーカー「テスラ」のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)や米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)らハイテク界の大物がインタビューやトークショーに参加するためにクラブハウスに加わったことで、同アプリのダウンロード数はここ2週間で2倍以上に増加した。

一般ユーザーや主流メディアの間で広く関心が集り、同アプリはピークに達したようだ。

クラブハウスはアクティブ・ユーザー数を明確にはしていない。モバイルアプリの分析を行う調査会社「センサー・タワー」によると、「クラブハウス」は1月31日までに230万回ダウンロードされた。しかし中には、アプリの利用に必要な招待を受けずにダウンロードしている人もいるかもしれない。

昨年5月、クラブハウスの評価額は1億ドル(約105億円)近くに上った。ここ数日で10億ドル(約1051億円)に達したと報じられている


<解説>中国当局の遅れた対応――ケリー・アレン、中国メディアアナリスト

春節の間は検閲の手を緩める中国当局にとって、クラブハウスは悩みの種になったはずだ。

海外のアプリは、中国で人気が出始めると同時に閲覧できなくなることが多い。しかし今回は、クラブハウスにアクセスできなくなるまでの数日間、中国を拠点とする多くのユーザーは海外の人たちと会話することができた。

近年では中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)などの国内電話メーカーの人気が急上昇していただけに、iPhoneでしか使えないクラブハウスがこれほど人気になるとは、当局にとって予想外だったのかもしれない。

クラブハウスが中国でブロックされたのかどうか、まだはっきりしない。しかし、8日に中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」のユーザー10万人以上がハッシュタグ「クラブハウスがブロックされた」(#ClubhouseBlocked)をつけて投稿。その後、このハッシュタグがついた投稿が検索結果に表示されなくなった。

全面的な検閲と表示停止に先駆けて、中国各地のユーザーは凍結されたとするアカウントの写真を共有していた。

国家主義的な中国国営英字紙・環球時報(グローバルタイムズ)は、クラブハウスが中国を拠点とするユーザーにとって「言論の自由の天国」になったという見解に反論し、ユーザーはむしろ「反中プロパガンダに使われているプラットフォームについて懸念をあらわにしていた」と主張している。

一方で、「このプラットフォームはまだ開発の初期段階にある」とし、「コミュニティーの友好的な雰囲気」を維持すれば復活するかもしれないと示唆した。


(英語記事 Clubhouse discussion app knocked offline in China