2021年02月10日 12:00 公開

ミャンマーの首都ネピドーで9日、数千人が集会禁止令を無視して国軍のクーデターに対する抗議デモを行った。警察はゴム弾を発射するなど、実力行使する場面がみられた。

デモ参加者に対して放水砲や催涙ガスも使用され、頭部に重傷を負った女性1人が病院に搬送された。

人権団体や報道機関によると、この女性は抗議活動中に頭部を撃たれて重体だという。

ミャンマーの一部都市では大規模な集会と夜間の外出が禁止されている。クーデター後に政府トップに就いたミンアウンフライン国軍総司令官は、法を超越する者は1人もいないと警告している。

ミャンマー国軍は1日、国家の権力を掌握したとし、今後1年間にわたる国家非常事態を宣言した。同日早朝には与党だった国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問(75)らを拘束した。

デモ隊はアウンサンスーチー氏やNLD指導者らの釈放を求めている。

与党本部が軍に「襲撃された」

大規模な抗議デモは9日で4日連続となった。NLDは同日夕、ヤンゴンにある同党の本部が軍に「襲撃され、破壊された」と明らかにした。

BBCビルマ語によると、9日夜に治安部隊が力ずくでNLD本部のドアを破壊した。当時、建物内に党員はいなかった。

NLDはフェイスブックページ上で、「軍の独裁者が午後9時30分頃、NLD本部を襲撃し、破壊した」と説明。それ以上の詳細は明かさなかった。

襲撃は、午後8時から翌朝4時まで外出が全国的に禁止されている中で起きた。

ネピドーでの抗議デモは10日午前に再開され、連続5日目に入った。同日早朝には、公務員の集団が首都ネピドーに集結したと、地元メディア「ミャンマー・ナウ」は報じた。

<関連記事>

ミャンマーの国営テレビは9日、抗議活動について初めて伝え、「攻撃的」な抗議者を鎮圧しようとした際に警官も負傷したと伝えた。また、マンダレーで警察のトラックが破壊されたとした。

ヤンゴン在住のネリー氏(仮名、18)は、自宅の外の光景は「完全な混乱状態」だったと述べた。

「私が最も恐れているのは私たちの安全だ。路上では大勢の人が抗議しているが、警官による暴力行為もたくさん起きている。自分たちがいつ撃たれるのか、いつ逮捕されるのかわからない状況だ」と、BBCワールド・サービス・ラジオの番組「アウトサイド・ソース」で述べた。

どのようにエスカレートしたのか

9日早く、警察はネピドーの抗議者たちに放水砲を発射し始めたが、デモ隊は撤退しなかった。

「軍事独裁を終わらせろ」と群衆は叫んだ。目撃者の話によると、抗議者の一部が警察に向けて何かを投げつけたという。

警察はデモ隊にゴム弾を発射する前に、空に向けて威嚇射撃した。

BBCビルマ語はネピドーの病院の医療従事者(匿名)の話として、女性1人が頭に重傷を負い、別の抗議者が胸を負傷したと伝えた。負傷した経緯についてはわかっていない。

実弾を使用か

ロイター通信は、頭を負傷した女性に実弾が使われたことを示す結果が、X線写真で確認されたと医師が述べたと伝えた。

AFP通信も、軍が実弾を使用していたとみている救急治療室の医師の話を報じた。負傷したのは23歳の男性と19歳の人物だという。

「傷やけがの状況から、実弾が使われたと考えている」とこの医師は述べた。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、「女性の頭に発射物が突き刺さり、脳の機能が著しく低下している」と1人の医師が述べたという。

この医師は実弾が女性の右耳の後ろを貫通したとみられると説明した。

また、人権保護団体フォーティファイ・ライツは、ある医師が同じ女性ついて「銃弾による頭部の致命的なけが」で脳死状態だと述べたとしている。

国連が「強い懸念」

ソーシャルメディアでは、撃たれてひどいけがを負った女性とされる動画や画像が広く拡散された。動画ではバイクのヘルメットをかぶった女性が倒れる様子が確認できる。複数の画像には血がついたヘルメットと思われるものが写っている。BBCはこれらが本物であるか確認できていない。

国連は9日の事案について「強い懸念」を表明。「デモ隊に対する不当な実力行使は容認できない」と、国連のミャンマー常駐調整官兼人道調整官オラ・アルムフレン氏は述べた。

複数の警官がデモ隊に加わったとする未確認の報告が多数上がっている。一部エリアでは、デモ隊がバリケードを通過するのを警察が許可したとされる。

ミャンマーでは数十年に及ぶ軍事政権に対する抗議行動が1988年と2007年にも起き、デモ参加者が死亡した。

抗議者の主張

「私たちは5人以上の集会が禁止されているのを承知の上でここへ来た」と、ヤンゴンの若い男性抗議者はBBCビルマ語に述べた。

「大統領とマザー・スー(アウンサンスーチー氏)が解放されるまで抗議しなければならない。だからここへ来た」

匿名で取材に応じた女性抗議者も、「若者には未来がある。だからこんなことは容認できない。(中略)自分たちの大統領とマザー・スーを取り戻すまでは闘い続ける。何が何でも」と述べた。

女性は、若い抗議者たちは軍との衝突を避けたがっているとした。

アウンサンスーチー氏をめぐっては、ミャンマーのイスラム教少数民族ロヒンギャ危機での対応に国際的な批判が集まっている。だが、国内では依然として非常に人気が高い。

軍の反応は

ミンアウンフライン国軍総司令官は8日、クーデター後初のテレビ演説を行った。昨年11月の総選挙で「不正投票」があったとし、権力の掌握は正当なものだと主張した。そして、選挙管理委員会に対し、有権者名簿をめぐる不正調査を怠ったと非難した。

選挙管理委員会は広範囲にわたる不正行為があったとする主張を裏付ける証拠はないとした。

ミンアウンフライン氏は「改革された」新しい選挙管理委員会が監督する、新たな選挙の実施を約束。軍が勝者に権力を移譲するとした。

ミンアウンフライン氏はまた、自身の政権と、2011年に終了した49年間の軍事政権は「異なるもの」だとした。

「真の規律ある民主主義」を達成するとした。このフレーズはソーシャルメディア上で、クーデター反対派の一部から冷笑を買った。

国際社会の反応

ニュージーランドは8日、ミャンマーとの全ての高官レベルの接触を停止し、ミャンマー国軍指導者の入国を禁止すると発表した。

アメリカも表現の自由を守るよう求めた。

「我々はデモ隊に対する暴力行為を強く非難する」と、米国務省報道官は述べた。

(英語記事 Myanmar police use force as protesters defy banWoman 'shot' at Myanmar protest fights for life