2021年02月10日 13:44 公開

香港の裁判所は9日、香港国家安全維持法(国安法)違反の罪で起訴されたメディア界の大物、黎智英氏(ジミー・ライ、73)の保釈を認めない決定を出した。

地元タブロイド紙・蘋果日報(アップルデイリー)創業者の黎氏は、中国政府を厳しく批判してきた。香港の民主化運動を支持する著名人の1人で、外国勢力と結託して国家安全保障を脅かしたとして訴追されている。

黎氏は昨年8月に逮捕された2日後に保釈されたが、12月2日にあらためて、不動産詐欺など別件の疑いで逮捕され、勾留された。

12月11日に国安法違反の罪で起訴され、23日にまた保釈が認められたものの、この決定を不服とした検察が上訴。31日に再審理のために再収監された

香港の最高裁にあたる終審法院は今回、保釈を認めた高等法院(高裁)の決定は間違いだったと結論付けた。一方で、再び保釈を申請することは可能だとしている。

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香港ではこれまで、非暴力犯罪の容疑者には保釈が認められてきたが、国安法ではその前提が覆されている。

中国政府は昨年6月に国安法を施行。民主派デモで揺れ続けた香港の安定を回復させるとしているが、反体制派を抑圧するものとの批判の声があがっている。

黎智英氏とは

黎氏は服飾産業で最初に財を築いた後、メディア業界に参入。アップルデイリーの親会社・壱伝媒(ネクスト・デジタル)を設立した。資産は10億ドル(約1050億円)に上るとされている。

香港メディアに中国政府への恐怖感が広がる中、黎氏は紙面や著作物を通し、中国指導部を公に批判し続けてきた。

こうした姿勢から、黎氏は多くの香港市民から英雄視されている。一方で中国本土では、国の治安を脅かす「裏切り者」とみられている。

12月初めの逮捕前にBBCの取材に応じた黎氏は、当局の威圧に屈することはないと述べていた。

「自分が(当局を)恐れるようになれば、向こうは最も手軽に、最も効果的に、こちらをコントロールできるようになるし、向こうもそれを承知している。威圧のやり口を倒すには、恐怖に立ち向かい、おびえないようにするしかない」

国安法とは?

香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。

これにより香港では、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護された。

しかし、中国は昨年6月末に国安法を可決し、施行。政府に対する「憎悪をあおること」や、中国当局者への制裁を外国に求めること、特定の抗議スローガンを使うことを、終身刑に処せられる可能性もある違法行為だと定めた。

これによって、香港の自治は後退し、反政府デモや民主活動家を処罰しやすくなった。

香港で逮捕された活動家が、中国大陸に移送され、陪審員のいない秘密裁判を受けることもある。大陸の公安警察が香港で活動することも合法化された。

国安法の施行以来、これまでに複数の活動家や民主派議員などが起訴されている。

(英語記事 HK tycoon Jimmy Lai denied bail under security law