2021年02月12日 14:22 公開

米連邦議会襲撃事件に関連したドナルド・トランプ前大統領に対する連邦議会の弾劾裁判で11日、民主党側はもし上院がトランプ氏を有罪にしなければ、同氏が「またやるかもしれない」と警告し、訴追側の陳述を締めくくった。12日にはトランプ氏の弁護団が反論を開始する。有罪か無罪かの評決は、早ければ週末にも行われる可能性がある。

トランプ氏を弾劾訴追した下院の弾劾管理人たちは、議会を襲撃した暴徒が自分たちはトランプ大統領(当時)の求めに応じてやってきたと口々に語る様子を紹介。トランプ氏は「暴力を振るおうと待機していた集団の前でマッチの火をつけ」るかのように反乱を扇動したのだとあらためて主張した。さらに、トランプ氏の行動が国内の治安とアメリカの国際的地位に「長期的な損害」を与えたとも述べた。

弾劾裁判は、大統領選に勝ったのはトランプ氏だと主張する集団が、議会によるジョー・バイデン氏の勝利認定を阻止しようと連邦議会を襲った1月6日の事件に関するもの。襲撃事件では警官1人を含む5人が死亡している。連邦議会下院は1月13日、トランプ氏が「反乱を扇動」し、この議会襲撃のきっかけを作ったと弾劾訴追した。

<関連記事>

下院多数党の民主党から選ばれた弾劾管理人たちは、暴徒がマイク・ペンス副大統領(当時)や議会幹部に肉薄する様子を未公表の防犯カメラ映像で示した前日に続き、トランプ氏の行動が財産や国民、民主主義に長期的な害をもたらしたと主張した。

弾劾管理人のテッド・リュー下院議員は、トランプ氏がこれまで自分の行動について反省や後悔の念を示していないと批判した上で、「弾劾され、有罪になり公職欠格になるのは、過去だけでなく未来の問題で(中略)未来の当局者や未来の大統領が絶対に、まったく同じことをしないようにしなくてはならない」と主張した。

同様に弾劾管理人のジョー・ネグース下院議員は、トランプ氏は問題のある発言をした「ただの一般人」ではなく大統領で、「暴力を振るおうと待機していた」支持者たちの前で「マッチの火をつけた」のだと話した。

民主党はさらに、自分たちはトランプ大統領(当時)の求めるままにワシントンに来たのだと口々に主張する暴徒の映像もあらためて示した。

デイヴィッド・シシリーニ下院議員は、動画や裁判資料を使い、「連邦議会と民主手続き」に危害が加えられたのだと主張。ペンス副大統領や民主党幹部ナンシー・ペロシ下院議長を殺害するつもりだったと一部の暴徒が認めているほか、他の議員たちを地下室に「閉じ込め」て「ガス栓をひねる」つもりだったと話す暴徒が複数いることも指摘した。

「合衆国大統領が駆り立てた暴徒によって、自分たちの命が脅かされるなど、私たちは想像したこともなかった」と、シシリーニ議員は述べた。

シシリーニ議員はさらに、襲撃の最中に議事堂内にいた議員スタッフについて語り、襲撃後に辞職した人がいると明らかにした。さらに、3人の子供の母親でもあるスタッフが「反乱のせいで、職場で安全に働けるという安心感が粉々になってしまった」と話していることも紹介した。

民主党はさらに、トランプ氏の行動が国内の治安とアメリカの国際的地位に「長期的な損害」を与えたと主張した。

ダイアナ・デゲット下院議員は、国内過激主義組織からの脅迫は「トランプ大統領が責任を取ろうとせず、自分の政権下の連邦捜査局(FBI)がこの国にとって最も危険な要素と呼んだ勢力を強硬に非難しようとしないその姿勢によって、当時も今もますますひどくなっている」と批判した。

議会襲撃の対外的な影響については、ホアキン・カストロ下院議員が、アメリカの同盟国は衝撃を受け、敵対国はアメリカを嘲笑する原因となったと指摘。「世界が見つめている。アメリカは本当に自分で言うような国なのかどうか、疑問に思われている」のだと述べた。

主任弾劾管理人のジェイミー・ラスキン下院議員は、宣誓証言を要請したトランプ氏が証言を拒否したため、弁護団への質問を次のようにまとめて、訴追側の陳述を締めくくった。

  • なぜトランプ大統領は、議会が襲撃されていると知った時点で直ちに自分の支持者に、襲撃をやめるよう言わなかったのか
  • なぜトランプ大統領は、襲撃開始から少なくとも2時間にわたり、襲撃をやめさせるため何もしなかったのか
  • なぜトランプ大統領は、圧倒され取り囲まれた警官たちを救うため、襲撃開始から少なくとも2時間にわたり、応援を派遣しなかったのか
  • 1月6日になぜトランプ大統領は一度も、暴力的な反乱や反徒を非難しなかったのか
  • もしも大統領がこの国の政府に対する暴力的な反乱を扇動したとするなら、それは合衆国憲法だ弾劾に当たる行為として定められる「重大な罪及び軽罪(high crimes and misdemeanors)」に相当するのか

弾劾裁判の展開は

上院で行われている弾劾裁判では、民主党多数の下院から弾劾管理人が検察官として、「反乱を扇動」したと弾劾訴追されたトランプ氏の罪状を、陪審員役の上院議員たちに陳述してきた。12日からはトランプ氏の弁護団の反論が始まる。

トランプ氏の代理人、ブルース・カスター弁護士とデイヴィッド・ショーエン弁護士は12日から2日間にわたり最大16時間かけて、トランプ氏を弁護することができるが、12日夜までには弁論を終わらせる方針を示している。

ショーエン弁護士は11日、民主党は上院に動画や音声を示すことで、「娯楽パッケージ」のように事件を陳述していると批判した。

弁護団の陳述が終わると、陪審員役の上院議員たちが弾劾管理人と弁護団の双方に、書面で提出した質問に答えを求めることができる。これには最大4時間が割り当てられている。

もし証人申請がなければ、評決は早ければ週末にも行われる可能性がある。

定数100の上院は現在、民主・共和両党が50対50で、上院議長でもあるカマラ・ハリス副大統領の票を合わせると51対50で民主党が多数党だが、弾劾裁判の有罪評決には3分の2以上の賛成が必要。つまり共和党から17人の上院議員が有罪に賛成しなくてはならないが、ほとんどの共和党上院議員はトランプ氏を支持している。

もし有罪となった場合、トランプ氏は今後、大統領など公職に立候補できなくなる可能性がある。

トランプ氏の弁護団は、すでに退任した前大統領に対する弾劾裁判は違憲で民主党の政治的動機によるものだと主張しているが、上院は9日、審理は合憲だと採決した。これには6人の共和党議員も賛成した。

(英語記事 Impeachment: 'Convict Trump or it could happen again,' trial told