
2021年02月16日 10:26 公開
レイチェル・シュレア保健担当記者
新型コロナウイルスの米ファイザー製ワクチンについて、イスラエルは14日、発症を94%防ぐ効果があるとする研究結果を発表した。
ファイザーのワクチンが、大人数への接種でも、臨床試験(治験)と同様の効果をみせていることが示された。
公衆衛生医ハガイ・レヴィン教授は、すべての年齢層で発症と重症化の予防に高い効果が表れているとしている。
「最も影響を受けやすいグループで接種率が高い」ことが重要だと、同教授は述べた。
重症化をほぼ完全に防ぐ
イスラエル最大の保健機構クラリットは、ワクチンを接種済みと未接種の60万人ずつに実施されたウイルス検査の結果を分析。
その結果、ワクチンを接種したグループでは、発症が94%少なかったという。両グループとも、年齢と健康状態に差が出ないように調整されていた。
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今回の研究は、通常は症状が出た時や、陽性と判定された人と濃厚接触した時に受ける検査の結果に基づいている。
ファイザー製ワクチンは、重症化をほぼ完全に防いだという。
こうした結果はすべての年齢層でみられた。治験ではデータ不足との指摘もあった、70歳以上の高齢者でも同じだった。
今回の研究データはまだ正式には公表されていない。
「個人を守るのに役立つ」
レヴィン教授は今回の研究について、ワクチンが有用であり、重症化しやすいグループで「非常に高率の」接種が必要なことを、「イギリスなどの国々に示す」ものだと説明。
一方、人口の何割にワクチン接種をすれば、感染防止対策の制限を緩和できるかはわからないとした。
「感染拡大にどんな影響を及ぼすかはまだわからない」
ただ、少なくとも「このワクチンは個人的な防御には役立つ」ことは明らかだと、レヴィン教授は話した。
イスラエル保健省でデータ分析をしているエラン・シーガル教授は、新型ウイルスの感染症COVID-19に対するワクチン接種の効果を判断するには、60歳以上の8割に接種する必要があると示唆した。
イスラエルは世界で初めて、ワクチン接種の効果の検証を進めている。何週間かかけて国民の多くが接種したことで可能となった。
ロックダウン効果よりも
発症の大きな減少は、最初に接種を受けた60歳以上の人々と、接種の開始が早かった都市部で確認された。これは、ロックダウン(都市封鎖)ではみられなかったことだ。ロックダウンではなくワクチンによって感染が減っていることの、有力な証拠と考えられる。
だがシーガル教授は、発症の減少が予想より緩やかだったことに警戒が必要だと述べた。イギリスで発見され、イスラエルでも優勢となった変異株の影響かもしれないという。
同教授はまた、イスラエルのワクチン接種は「非常に速いペース」で進んでいるが、今なお未接種で感染すれば重症化の恐れがある人も何万人かいると指摘。
「ロックダウン解除にはまだ非常に慎重であるべきだ」とし、対応を誤れば多くの人が入院するリスクがあると述べた。
パレスチナ自治区では
イスラエルは感染の大きな波に見舞われ、厳しい対策を取り続けている。現在は16歳以上がワクチン接種の対象となっており、少なくとも教育機関の再開を望む声があがっている。
イスラエルはまた、パレスチナ自治区におけるワクチン接種を誰が進めるのかをめぐって、批判を浴びている。
イスラエルは、パレスチナ人が暮らすヨルダン川西岸とガザ地区での医療従事者への接種のため、ワクチンの輸送を始めたばかりだ。
一方、イスラエル国民の4分の1が2回の接種を終えている。
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