2021年02月16日 13:13 公開

スペインの王室や警察をツイッターの投稿や歌詞で攻撃したとして、禁錮刑が言い渡された同国のラッパーが、服役を逃れるため北東部カタルーニャ自治州の大学に立てこもった。

ラッパーのパブロ・ハセル氏(33)は、テロリズムを美化し、王室や国家機関の名誉を傷つけたとして、裁判で禁錮9カ月の刑が確定。今月12日が出頭期限だった。

しかしハセル氏は15日、カタルーニャ州リェイダ市にあるリェイダ大学内に、約20人の支持者らと共にいるとツイート。同市は州都バルセロナの西約150キロに位置する。

「私を連れ去って収監しようと思ったら、押し入ってこないとだめだ」と、挑戦的な投稿をしている

映画監督らが収監に反対

ハセル氏はこれまで、ツイッターと歌詞で王室を攻撃。警察についても、デモ参加者や移民を拷問、殺害していると非難した。

メッセージの1つでは、活動が禁止されたマルクス主義団体「10月1日反ファシスト抵抗グループ」(GRAPO)のメンバーで、刑務所に収監されているヴィクトリア・ゴメス服役囚への支持を表明した。

ハセル氏の収監をめぐっては、「オール・アバウト・マイ・マザー」などの作品で知られる映画監督のペドロ・アルモドバル氏や、米ハリウッドスターのスペイン人俳優ハビエル・バルデム氏ら芸術家200人以上が、反対の署名活動に加わっている。


スペイン政府は、テロリズム美化や憎悪発言、王室や宗教の侮辱などの「表現による犯罪」について、芸術家が関与している場合や文化活動においては、刑の軽減を予定している。

カタルーニャ独立も支持

ハセル氏の本名はパブロ・リヴァデュラ・デュロ。カタルーニャ州の独立運動を応援していることでも知られる。

カタルーニャ州では2017年、独立を目指す住民投票を実施し、州議会が独立を宣言。1975年に独裁者フランシスコ・フランコ総統が死去して以降で最大の、スペインの政治危機へとつながった。同州では今月14日、州議会選挙があり、独立派が過半数の議席を獲得した。

スペインでは2018年、バルトニックと呼ばれる別のラッパーが、禁錮3年6カ月の刑で収監される直前にベルギーに逃亡。ベルギーの裁判所はスペインに引き渡さないことを決定した。スペインは指名手配を続けている。

<解説>スペインの表現の自由をめぐる議論――ジェイムズ・バドコック記者(マドリード)

パブロ・ハセル氏に対する裁判所の収監命令が実行されれば、彼はスペインで近年、表現をめぐる犯罪で刑務所に入る最も有名な人となる。ただ、議論を呼んでいるのは彼のケースだけではない。

他の芸術家やブロガーらも「テロリズム美化」の罪に問われている。この罪は非常に広範に適用されており、かなり昔のテロ行為であっても擁護するようなことがあれば、犯罪とされ得る。

2018年には、ラッパーのバルトニック氏に対する有罪判決が最高裁で確定した。右翼政治家に銃弾を、国王には絞首の縄を約束するなどとした発言が、テロリズム賛美と王室への侮辱だとされた。

その前年には、カサンドラ・ヴェラ氏というツイッターユーザーが、1973年に起きたフランコ総統のナンバー2だったルイス・カレーロ・ブランコ首相の暗殺事件についてジョークを言っただけで、禁錮刑が言い渡された。ヴェラ氏は上訴審で無罪となった。

スペイン政府は関連の法律を見直すと約束している。表現による犯罪をめぐる法的な議論は、無味乾燥で学術的なものと考えられがちだ。しかし、スペインの各都市でこのところ、ハセル氏を擁護する落書きが多発していることからは、この国の多くの若者が、自由が危機にあると感じていることを示している。

(英語記事 Rapper locks himself in university to avoid jail