豊田社長のコメントは、IOCにとって最大のスポンサーの発言なだけに大きな意味を持つ。その前日にIOCの態度が急変したのも、トヨタを筆頭としたスポンサー企業の意向を受けたためと考えるとわかりやすい。

 現在のオリンピックは非常に大きなお金が動く。それだけにスポンサー企業の意向は無視できない。

 これはオリンピックに限った話ではない。米国で圧倒的人気を誇るアメリカンフットボールリーグ「NFL」。このNFLに「ワシントン・レッドスキンズ」という老舗チームがあった。

「あった」と書いたのは、このチームは昨年のシーズン開始前、「レッドスキンズ」が先住民族に対する差別だとの批判を受け、前季は「ワシントン・フットボールチームズ」という仮のチーム名で戦わざるをえなかったからだ。

 レッドスキンズに対する批判は以前からあった。しかしチームオーナーは「絶対に変えない」と拒み続けていた。しかし昨年、「BLM(黒人の命も大切)運動」が起こり、それがレッドスキンズにも波及。最後はフランチャイズスタジアムのネーミングライツを持つフェデックスや、NFLと関係の深いナイキなどがチーム名変更を求めたため、オーナーも従わざるを得なかった。

 この時は、80以上の投資家グループがスポンサーに対し書簡を送り、影響力を発揮するよう求めているが、その背景にはSNSなどで盛り上がった市民の意向を、スポンサー企業が無視できないという現実がある。仮に無視を続ければ、不買活動につながりかねず、企業業績悪化につながりかねない。

 これは五輪スポンサーにも当てはまる。事実、豊田章男コメントと前後して、多くの五輪スポンサーが森発言に対する批判を表明している。

 五輪スポンサーには、前述のTOPパートナーと、リージョナルスポンサーの2種類がある。TOPパートナーはIOCと契約するが、リージョナルスポンサーは、大会ごとに大会組織委員会と契約する。
写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
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 東京2020の場合、組織委と契約した企業数は60社以上。そのスポンサー料の合計は、推計で4000億円を超える。過去の大会でのスポンサー料は1500億円前後、東京2020はオリンピック史上、最大の“集金”に成功している。

 このスポンサー集めに力を発揮したのが、森会長だった。首相経験者ということもあり、森氏の人脈は政財官・スポーツ界など、至るところに広がっている。しかも、通常、スポンサー契約は1業種1社だったものが、組織委はIOCを動かし、1業種複数社の契約を可能にした。