2021年02月20日 11:42 公開

英最高裁は19日、米配車サービス大手ウーバーの運転手について、個人事業主ではなく従業員として扱われるべきとの判断を示した。これにより、数千人の運転手は最低賃金や有給休暇が認められる可能性が出てきた。

裁判所の判断により、ウーバーは多額の賠償金請求に直面す可能性があり、単発で仕事を受注して収入を得るいわゆる「ギグ・エコノミー」により広範な影響を及ぼすこととなる。

ウーバー側は、今回の判決は数人の運転手に関するものだと主張した。

同社はこれまで運転手は従業員ではなく個人事業主だと主張してきた。しかし長期におよぶ法廷闘争で、雇用審判所や控訴院などで3度にわたり訴えを退けられ、最高裁に上訴していた。

ウーバーは複数の国でも、運転手を従業員と個人事業主のどちらに分類すべきかをめぐり提訴されている。

英最高裁の判断がウーバーのビジネスモデルに与える影響への懸念から、同社の株価は19日の米株式市場の取引が始まると急落した。

最高裁の判断

最高裁は、自分たちはあくまでも仲介者だとするウーバー側の訴えを判事全員の一致で棄却。運転手は乗客を乗せている間だけでなく、アプリにログインしている間は勤務中とみなされるべきだと結論付けた。

最高裁が考慮した要素の一部は次の通り――。

  • ウーバーが運賃を決め、運転手が稼げる金額を設定している
  • ウーバーが契約条件を設定し、運転手側に発言権がない
  • 乗車リクエストはウーバーに制約されている。ウーバーは運転手があまりにも多く乗車拒否した場合にペナルティを課すことができる
  • ウーバーは5つ星評価を通して運転手のサービスを監視し、警告を繰り返しても改善されない場合は契約を終了する権限を持っている

こうしたことなどを理由に、最高裁は運転手はウーバー社に従属する立場にあり、収入を増やすには長時間労働しかないと判断した。

ウーバーの反応

ウーバーの北欧・東欧地域担当ゼネラル・マネージャーのジェイミー・ヘイウッド氏は、「裁判所の判断は、2016年にウーバー・アプリを利用した数人の運転手に関するもので、我々はこれを尊重する」と述べた。

「2016年以来、我々は一歩一歩運転手たちの助言を得ながら、当社事業にいくつかの重要な変更を加えた。この中には、運転手が収益を得る方法を運転手自身が前より管理できるようにしたり、病気やけがに備えた無料の保険提供など、新たな保護の提供も含まれる」

「我々は今後も改善を重ねていくし、イギリス国内で活動する運転手全員に、どういう変化を希望するか聞き取り調査をしていく」

判決の背景

ウーバーの元運転手ジェイムズ・ファラー氏とヤシーン・アスラム氏は2016年、同社従業員としての権利を求めて雇用審判所に訴えを起こした。ウーバーは運転手は個人事業主であり、同社には最低賃金の保障や有給休暇を与える責任はないと主張していたが、雇用審判所は同年10月、ファラー氏とアスラム氏の主張を認めていた。

ウーバーは雇用審判所の判決を不服として上訴したが、2017年11月に雇用審判所は2016年の判決を支持した。

その後ウーバーはこれを不服として控訴院に上告したものの、2018年12月に控訴院も判決を支持した。今回の最高裁判断で、ウーバー側の敗訴が確定した。

ファラー氏とアスラム氏は勝訴確定について、「感激してほっとした」とBBCに語った。

アプリ運転手・配達員労働組合(ADCU)代表のアスラム氏は、「私たちが業界大手に立ち向かうことができたという点において、これは大きな成果だと思う」、「私たちは諦めず、一貫した姿勢で臨んだ。体や気持ちに何があっても、経済的に何があっても、自分たちの立場を貫き通した」と述べた。

ウーバーは以前から、同社は交通サービスを提供する自営業者を雇う、予約代行業者だと主張してきた。

運送業者に分類されていないことから、ウーバーは現在、運賃に対する20%の付加価値税(VAT)を支払っていない。

運転手の苦境

アスラム氏は、ウーバーの商慣行のため生活費を稼げず、離職を余儀なくされたと主張している。再びウーバー運転手に復職しようか検討しているものの、判決が出るまでに時間がかかったことにいら立っているという。

「2015年に私たちが得るべきだったものを確立するのに6年かかった。政府や規制当局のどこかの誰かが、不安定な立場にある労働者の多くをひどく失望させた」

ファラー氏は、新型コロナウイルスの影響で運転手の売上が80%下がっていると指摘。多くの運転手が財政的に苦しみ、ウーバーの仕組みの中で身動きがとれないと感じているとした。

ファラー氏によると、運転手の現在の稼ぎは1日30ポンド(約4000円)程度。英政府が提供する自営業者への助成金は、運転手の利益の80%にしか適用されないため、必要経費も十分にまかなえないという。

「権利が今すぐに獲得できれば、運転手は少なくとも最低賃金を稼いで生活できるはずだ」

(英語記事 Uber drivers are workers not self-employed