原田謙介(NPO法人ユースクリエイト元代表理事)

 まるで令和の織田信長ではないか―。これが先の埼玉県戸田市議選で初当選を果たした西本誠氏(34)に抱いた印象だった。西本氏は「スーパークレイジー君」の通称で昨年の東京都知事選に立候補して、「金髪特攻服パフォーマンス」で話題を呼んだことでも知られている。

 市議として初登庁した2月8日、スーパークレイジー君は派手な色の髪を黒に戻して現れ、周囲を驚かせた。この振る舞いが戦国時代の雄、信長と重なったのだ。

 歴史好きな人はご存じだろうが、信長にはこんなエピソードがある。織田氏が治める尾張の隣国、美濃の斎藤道三が、聖徳寺(愛知県一宮市)で信長と会談することになった。これに先立ち道三が相手の様子を窺うと、信長はかなりくだけた会談にふさわしくない格好をしている。「うわさ通りのうつけ者(馬鹿者)」と道三は侮るが、会談の席には見事な正装で現れ度肝を抜かれたという。スーパークレイジー君が金髪を「封印」して黒髪で登庁したことに、議員としての並々ならぬ決意と、スマートな戦略を私は感じたのだ。

 もう一つ、信長と重なるエピソードがある。会談にあたり信長は、当時まだ珍しかった鉄砲を持った兵士を多く連れていき、道三を感服させたといわれている。スーパークレイジー君には小学生も含む若者など、他の政治家にはない仲間が多くいるようである。政治の世界では珍しい仲間とともに、市政をどのように変えていくのかも楽しみだ。

 信長は桶狭間の戦いで今川義元を破り、楽市楽座などの斬新な政策を打ち出して時代を変えていった。スーパークレイジー君が今後どのように活躍するか予想できないが、私はすごくワクワクしながらツイッターなどで彼の活動を追っている。

 改めて自己紹介をさせていただくと、私自身は立憲民主党公認として次の衆院選への挑戦を予定している34歳だ。10年以上にわたり、若者と政治をつなぐ活動をNPO法人などで行っている。インターネット選挙運動の解禁や、18歳選挙権の実現などに取り組んできた 。

 2019年、参院選(岡山選挙区)に立候補したが落選し、今はいわゆる浪人中の身だ。NPO活動、政治活動を通じて、「政治の若者離れ」を変えることをテーマの一つとしている。選挙のたびに若い世代の投票率が他の世代より低く、「若者の政治離れ」と言われ続けている。だが、私は若者が政治から離れたのではなく、政治が若者から離れていったのだと思っている。 
「スーパークレイジー君」の通称名で出馬し、支持を訴える西本誠氏=2021年1月30日、埼玉県戸田市のJR戸田公園駅前(内田優作撮影)
「スーパークレイジー君」の通称名で出馬し、支持を訴える西本誠氏=2021年1月30日、埼玉県戸田市のJR戸田公園駅前(内田優作撮影)
 学校の中でしっかりとした政治教育の機会がなく、政治との関わり方を学べない。子供や子育て世代の意見を聞かず、いつの間にか公園ではしゃぐことすら禁止される。少子高齢化が進む中、次の世代に負担を先送り。選択的夫婦別姓の議論も進まない。

 例を挙げればきりがない。このように、若い世代の悩みや不安に寄り添うことのない政治が続いている。この「政治の若者離れ」の状況を政治の世界に入り、変えていく覚悟だ。威勢のいいことを書いたが、私はまだ議員ではない。