論点は、緊急事態宣言の再発令(と延長)で、どれだけ個人消費が落ち込むのか、である。内閣府の推計では2020年4~6月で266兆1265億円(前期比24兆8741億円減)という悲惨な落ち込みだった。ただし、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏によれば、緊急事態宣言再発令の10都府県は、家計消費全体の約57・8%である。また、延長と同時に栃木県での解除も決まり対象の地域が減っている。

 前回は全般的な休業要請だったが、今回は飲食中心の営業短縮であることにも注意が必要である。繁華街やビジネス街などの人通りを調査すると、前回ほど劇的な低下を見せていない。人の移動と月次GDPの高い相関を考えると、経済の落ち込みが今回はかなり限定的なものになるというのが、多くのエコノミストらの推測である。

 代表例として永濱氏の推測をあげると、人出が前回の宣言時よりも2・1~2・7倍などを根拠にして、3兆円ほどのGDPの減少を計算している。ご本人に直接聞いたことがないので間違っていたら申し訳ないが、日本でも「絶滅危惧種」扱いされている筆者と同じリフレ派であることに敬意を表して、永濱氏の推計を採用しよう。

 ちなみに筆者の推計は、動画番組の「Schoo(スクー)」で解説したが、だいたい4・7兆円から6・2兆円の幅になる。幅が出るのは、宣言下での経済活動の不確実性が大きいからである。実際に、延長してからのほうが繁華街など賑わいを見せている。が、それを事前に予想できた人は少ない。

 永濱氏の約3兆円の落ち込みに対して、政府が採用した政策は協力金や支援金などの支出増約1兆円であるので、まだ2兆円(筆者の推計だと3・7兆円以上)不足する。このままそれを放置すれば、雇用や経営の困難は増してしまうだろう。

 2020年度予算の予備費がまだ3兆円近く残っているので、これを企業や低所得層に直接に支援するのがいいだろう。緊急事態宣言における企業の売上損失を補償する政策、あるいは低所得層への直接給付でもいい。永濱氏の推計では、予備費残額を早急に使えば需給ギャップは「埋まる」。

 前回も書いたが、話はこれだけでは終わらない。もともと新型コロナ危機が始まる前に、日本経済は消費増税と米中貿易戦争で景気が減速していた。経済を安定化させるには、インフレ目標を達成するまで、積極的な金融緩和と財政出動が求められる。
緊急事態宣言発令中でも多くの人出が見られる東京・新橋=2021年2月8日
緊急事態宣言発令中でも多くの人出が見られる東京・新橋=2021年2月8日
 今回は求められる財政政策の規模感だけを指摘しておく。ワクチン接種の本格化によって、国民の多くが新型コロナ危機の終焉(しゅうえん)を予想できた段階で、少なくとも10兆円程度の追加歳出を伴う財政政策を行うべきだろう。ただ、10兆円がたとえ倍になったとしても、米国で議論されている財政積極派同士の経済の過熱か否かをめぐる政策論争が起きる心配はまずない。残念ながら「敵」はいつだって財政緊縮派である。