2021年02月26日 11:32 公開

ジョー・バイデン米大統領は25日、サウジアラビアのサルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王と電話協議し、人権問題などについて意見を交わした。アメリカは長年の同盟国サウジアラビアと、新たな関係の構築を模索している。

ホワイトハウスによると、バイデン氏はアメリカが重視する「普遍的な人権と法の支配」の大切さを強調したという。

アメリカでは近く、サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショジ氏の殺害に関する米当局の報告書が公表される予定。バイデン氏はこれを読んだ後に、今回の電話協議に臨んだ。

報告書はサルマン国王の息子、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の役割に言及しているとみられている。

アメリカはドナルド・トランプ前政権下で、サウジアラビアとの関係強化を図ってきた。カショジ氏殺害の報告書については、両国の協力関係改善を優先し、機密解除された形での公開に必要な法的手続きをとらなかった。

これに対しバイデン氏は、いくつかの具体的な案件について、サウジアラビアの姿勢にかなり厳しい対応を取るとみられている。

カショジ氏は2018年10月、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺され、遺体を切断された。ムハンマド皇太子は関与を否定している。

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サウジアラビア当局は、カショジ氏を帰国させようとした工作員らによる「勝手な作戦」だったとした。同国の裁判所は殺害に関わった5人に死刑判決を言い渡したが、昨年9月に禁錮20年に減刑した。

バイデン氏の発言

この日の電話協議についてホワイトハウスは声明で、カショジ氏には直接触れず、「大統領はサウジ系アメリカ人活動家たちと(著名女性人権活動家の)ルジャイン・アル=ハズルール氏が最近拘束を解かれたことを評価し、アメリカが重視する普遍的な人権と法の支配の大切さを強調した」とした。

ハズルール氏は約3年間の拘束を経て今月解放された。ただ、移動は制限されており、メディアの取材に応じることは禁じられている。

ホワイトハウスによると、バイデン氏とサルマン氏は「アメリカとサウジアラビアの長年にわたる協力関係」や、サウジアラビアが親イラン派グループから受けている脅威について協議した。

「大統領はサルマン国王に、両国の関係をできる限り強く透明なものにしていくと伝えた」、「両指導者は両国関係の歴史的性格を明確にし、懸念や国益が絡んだ問題に協力して対応することで合意した」という。

BBCのバーバラ・プレット・アッシャー米国務省担当特派員は、バイデン氏にとって、カショジ氏殺害に絡んでムハンマド皇太子の名前を出すことは、サウジアラビアとの関係に緊張をもたらすことになるだろうと解説。

一方で、米当局の報告書で皇太子らの名前が上がれば、制裁措置を取るようバイデン氏に圧力がかかるとみられると説明した。

その上で、皇太子は近い将来国王になるであろうことから、バイデン氏はこの日の電話協議で特定の分野での懸念は表明したものの説明責任は追及せず、別の分野で協力関係を続けたいと、微妙なメッセージを送ったと分析した。

カショジ氏殺害事件

殺害時59歳だったカショジ氏は、サウジアラビア政権に批判的なことで知られていた。2018年10月、トルコ人婚約者との結婚に必要な書類を入手するため、イスタンブールのサウジアラビア総領事館に出向いた。

カショジ氏はこれに先立ちに、皇太子の弟で当時サウジアラビアの駐米大使だったハリド・ビン・サルマン王子から、総領事館を訪れても安全だと保証されていたとされる。一方のハリド王子は、カショジ氏と連絡を取ったことはないと主張している。

サウジアラビアの検察当局によると、カショジ氏は総領事館で工作員らともみ合いになり、体を押さえつけられて大量の薬物を注射された。その後まもなく薬物中毒で死亡した。遺体は切断され、総領事館の外で現地の「協力者」に手渡されたという。遺体は発見されていない。

残忍な犯行の詳細は、トルコ情報当局が入手した殺害時の録音とされる音声の文字起こしによって明らかになった。

カショジ氏はかつて、サウジアラビア政府の顧問を務め、王室とも近かった。しかし王室から嫌われ、2017年にアメリカで自ら逃亡生活に入った。

以来、米紙ワシントン・ポストに毎月コラムを執筆。ムハンマド皇太子の政策を批判した。

最初のコラムでは、皇太子による反体制派への弾圧によって、自らも拘束されるのではないかと恐れていると書いた。

最後となったコラムでは、イエメンの紛争におけるサウジアラビアの関与について批判した。

(英語記事 Biden raises human rights in call with Saudi king