現在、学校で行われているオンライン授業もこのタイプですが、双方向のコミュニケーションは難しいのが現実です。パソコンやスマホの機能によって可能になるだけに過ぎず、「質問するタイミングが分からない」「話を聞いている時間が長くて退屈」などの精神的な「障壁」は大きいのです。

 大学生さえ「授業はほぼ聞いていなかったし、身につかない」「教授がオンライン授業に不慣れすぎる」「質問などできる雰囲気がない」「授業中に友達とラインやツイッターをしている」などとこぼしており、ポジティブな意見としては「授業の欠席がなくなった」「単位が取りやすくなった」などでした。やはり、双方向というのは大人側、塾側の論理なのです。

 実際、コロナ禍を受けて中学受験の4大塾、SAPIX、四谷大塚、日能研、早稲田アカデミーは、一時的にオンライン授業やユーチューブなどによる動画配信に切り替えましたが、緊急事態宣言解除後、すぐに通常の対面授業に戻しました。授業の満足度が低いという意見が寄せられたからです。

 オンライン授業は自宅で視聴できるので、教室で行う通常の授業とは異なり、保護者が授業内容と子供の様子を見ることができます。それを目の当たりにした保護者の感想は「子供が集中していない」「授業はおじさん講師で話もおもしろくない。大人の私でも理解しにくい」「大人でも集中してられないのになぜこんな授業を」。大手の塾だから質の高い授業をやっているだろうというブランド頼みの安心感、うちの子はきちんと授業を受けているだろうという思い込みが一気に崩れたのです。緊急事態宣言明けに当塾への入塾した子供の保護者からは「子供の成績不振は本人の努力不足だけが原因だと思っていた」と大手塾に対する厳しい意見が寄せられました。

 塾の授業がオンライン化されたことにより、授業そのもののクオリティーの低さに対する不満が保護者から噴出しました。教育業界の「闇」の部分がコロナ禍で明らかになった格好ですが、長期的な視点で見ればよいことであると思います。

 大手塾では、テストや偏差値によるクラス分けが頻繁に行われます。数カ月おきに行われるテストの結果でクラスを分け、成績が同程度の生徒に合った授業を行うという方法ですが、成績下位のクラスでは授業が成り立たない塾も多いと聞きます。特に、クラスが細分化されている塾の下位~最下位のクラスではモチベーションも低く、授業中に騒ぐ子も多数いるようです。こうした授業の様子をオンライン化で保護者が知ることになり、大手塾に対する信頼感が大きく揺らぐことになりました。

 また、子供たちがユーチューブで授業と関係のない動画を見ている、パソコンで勉強せずゲームをしている、顔芸で他の子供らを笑わせて授業を妨害するという「惨状」もあったようです。

 集団塾だけでなく、生徒と講師が1対1で授業を行う形式の個別指導塾でも問題が明らかになりました。
感染対策を行いながら塾で勉強をする生徒ら=2021年1月19日、奈良市(須谷友郁撮影)
感染対策を行いながら塾で勉強をする生徒ら=2021年1月19日、奈良市(須谷友郁撮影)
 個別指導塾のよい点としては、講師と生徒が向き合って指導するので置いてきぼりが少ないことが挙げられます。ですが、1人の講師が同時に2、3人を教える塾もあります。子供に合わせすぎるために授業のスピード感が遅くなり、競争心がない子供は極端なマイペースに陥ってしまうデメリットもあるでしょう。「子供のペースに合わせた授業」と聞けば良いイメージを抱きがちですが、保護者からは「よりわがままを言うようになった」というネガティブな声が出ることも少なくないのです。

 成績が落ち込んでいる子供は自学力もなく、やる気もない傾向にあります。そういった子供のペースに合わせていても学力改善は望めません。指導のテクニック的な面だけでなく、一歩踏み込んで生徒と保護者との強い信頼関係を構築し、時には厳しく、時には合わせていく柔軟性と強さが講師に求められます。それは非常にタフな仕事であり、質の高い人材にしかできないことです。

 優れた講師の人数は限られているのに、個人指導塾の数が多すぎると言えます。フランチャイズ化して、素人である脱サラのオーナーや、理念のない経営者が利益目的で管理している塾も非常に多いのです。アルバイト情報誌などに「未経験でもOK」「オンラインでいつでも稼げる」などと求人を出し、塾講師や家庭教師の経験を採用条件に設けないところもあります。名ばかりの「プロ講師」が増え、塾講師の全体的な質を低下させているのです。

 そこで、講師の質をどのように見抜くか、というポイントを挙げたいと思います。