一つは、卒業証明書を提出させて担当講師の学歴を確認することです。採用の段階で卒業証明書の提出を求めない塾や家庭教師では、残念ながら「学歴詐称」が日常茶飯事となっています。東京大卒だとうそをついた人を雇えば「東大卒の講師」という価値を付加して売り出せてしまうので、悪だくみをする塾にとって都合がいいのです。

 学歴は指導の質に影響を与えます。知識を自分のものとしてきた経験があるかどうかは、講師にとって重要な要素であることは間違いありません。私の塾では採用面談で卒業証明書の提出を求めていますが、いざ提出するというタイミングで辞退を申し出る、提出には時間がかかると言葉を濁す、早稲田大卒と言いながら別の大学のものを提出するということもありました。中には、前述した塾側のたくらみを意識して「東大卒としたほうが(お互いに)得じゃないですか?」と取引を持ちかける、ひどい人もいました。学歴や職歴を偽った「プロ講師」が子供らの教育に介入していく――これが実態です。私が教育業界の採用に関わるようになった2007年から変わっておりません。

 このような塾では、講師の名前をホームページ(HP)や資料で公開していないので、割と簡単に見破ることができます。大きい個別指導塾では看板講師だけを公開し、主婦や学生のアルバイト、高学歴でない講師を積極的に紹介しようとはしません。「大手だから講師の学歴も良いだろう」「大手なら安心できる」という思い込みは一切通用しないのです。もし気になったら、講師の卒業証明書の提示を塾に求めてみましょう。

 もう一つは、はっきりと分かる形で講師の名前を公開しているかどうかです。特別な事情がある場合を除けば、サービスの提供者である講師の名前を公開することに問題はないと思います。すべての講師の名前をイニシャルや仮名書きで記し、顔写真を出さずに「東大卒」「慶応大卒」と学歴だけ紹介している塾のHPもありますが、これらの情報が本当か慎重に判断したほうがいいでしょう。

 では、どのように塾を選べばいいのでしょうか。個別指導塾に関して言えば、塾のブランドや認知度は授業の質に影響しません。個別指導塾は授業が生命線です。塾そのものが子供を指導するわけではありません。私が提案する塾選びのポイントは以下の4つです。

(1)専門性があるか 

 個別指導塾としての専門性があるか、何に強い塾なのかを見抜くことは重要です。塾といっても専門性があるべきだと私は思っています。当塾は小学生の中学受験に特化しており、私もこの分野に12年以上、身を置いていますが、まだまだ改善の余地はあります。

 しかし、ほとんどの個別指導塾では小中高生、さらには社会人まで対象にし「中学受験、高校受験、大学受験のすべてに対応します」と宣伝しています。こういった塾には残念ながら専門性がありません。学校の教員でも、小中高の学校の種類ごとに教員免許状が必要ですし、全学年を指導する教員は少数でしょう。医者でも耳鼻科、眼科、内科、外科と専門分野があります。しかし、なぜか個別指導塾では、1人の講師が「全部やる」ということがまかり通っているのです。そして、誰もそれを疑いません。

(2)体験授業を受けられるか

 お試しで講師の授業を受けることができるかどうかも確かめてください。子供の感想を聞くだけではなく、「授業を通して課題を見つけ、どう改善していくのか」という道を示せる本物のプロなのか、信頼できる人物であるかどうかを見定め、保護者も講師と話をすることをおすすめします。

(3)講師の雇用形態はどうか

 子供の担当になる講師の雇用形態(正社員、契約社員、アルバイト、業務委託)を確認することも重要です。雇用形態を確認することは教育サービスを受ける側の権利であると、私は考えています。低価格の大手個別指導塾に正社員はほぼおりません。フランチャイズ経営されている教室がほとんどで、オーナー以外は非正規雇用なのが一般的です。講師の出入りが比較的激しいので、担当講師がコロコロと変わってしまうかもしれないのです。

 担当講師がその会社に所属する正社員であれば、本人に退職の意志がない限り変更はないでしょう。しかし、アルバイトであれば講師の都合で休んだり、辞めたりする可能性も高くなります。また、業務委託契約、契約社員であれば契約の期間を聞いてみてください。受験の直前に講師が辞めてしまったり、別の人に代わったりすれば合否に影響します。また、大学生のアルバイト講師には留学、就職活動、テスト期間などの事情で仕事を続けられなくなるデメリットがあることにも注意してください。

(4)感染症対策をしているか

 授業料の安さを強みにしている個別指導塾は、薄利多売ビジネスになる傾向があります。マスク着用やアクリル板の設置などの対策をしていても、1つの教室で多くの生徒を多くのアルバイト講師が指導すれば、それだけ感染症のリスクも高くなってしまいます。特に受験シーズンは体調に気をつけなければいけません。新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染が起きにくい環境か、教室の人数や密度を現場で確かめてください。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 どんなビジネスの世界でも透明性が重視されているのに、個人指導塾と家庭教師の業界では「ブラックボックス」と言っていいほど情報を非公開にする会社が少なくありません。塾選びをするときは、前述のように講師の情報をHPで公開しているかを見て、可能であれば両親とも説明を聞きに行くことをおすすめします。プロを名乗る講師や塾を妄信していないか、そのリスクを見直す機会になれば幸いです。