2021年03月03日 14:27 公開

シリアの10年にわたる内戦で、多くの民間人が当局の思うままに拘束され、いまなお数万人が行方不明になっているとする国連の調査が公表された。

シリアでは、バシャール・アル・アサド大統領が率いる政府が2011年3月、平和的な反政府運動を武力で抑え込もうとし、内戦状態に陥った。

これまでに38万人以上が死亡。国民の半数近くが避難生活を送っており、うち約600万人は国外で難民となっている。

国連人権理事会の「シリアに関する独立国際調査委員会」による新たな報告書は、ほぼすべての当事者による戦争犯罪や人道に対する罪を取り上げた。拘束後に拷問を受けたり殺されたりした人も数千人に上るとしている。

報告書の作成にあたっては、2650人以上に聞き取り調査をし、100カ所以上の拘束施設を調べた。被害者や目撃者らは「想像を絶する苦しみ」を表現。わずか11歳の少女や少年に対するレイプもあったと述べている。

報告書はそうした問題を「国家的なトラウマ」だと述べ、対応が必要だとしている。

不衛生な環境や拷問

報告書をまとめた調査委のパウロ・ピニェイロ委員長は「政府軍が政敵やジャーナリスト、人権活動家、デモ参加者らを恣意(しい)的に拘束したことが、紛争の根本でありきっかけでもある」とした。

「武装勢力や(ヌスラ戦線やイスラム国など)国連指定のテロ組織が人々から自由を奪い、凶悪な暴行を犯した。多くの場合で勢力争いが背景となっていた」

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拘束を経験した人たちは、太陽光が入らない場所に何カ月間も閉じ込められ、不衛生な水を飲まされたり、かびの生えた食べ物を食べさせられたりしたと語った。トイレのない部屋に数百人が押し込められ過密状態が続き、医療は受けられなかったとした。

政府の刑務所で拷問を受けたり、非人道的な扱いをされたりしたと訴える人々は、治安当局者らが偽の自白を引き出すため20種類以上の方法を使っていたと、調査委に述べた。

拷問には、電気ショックを与える、体の一部を焼く、爪や歯を抜く、手足の1つまたは2つにひもなどをつけて長時間つるす、といった方法があったという。

西部ホムスで政府側に拘束された男性は「拷問を受け、尋問された。『お前をここで今殺すこともできる。誰にも知られずにだ』と言われた」と振り返った。

生存者らは、慢性的な体の痛みや、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など深刻な精神的被害に悩まされ続けていることも訴えた。

ホムスと首都ダマスカスの軍施設で拷問を受けレイプされたという女性は「おむつなしでは暮らせない。体中が猛烈に痛い。もう希望はない。私の人生はめちゃくちゃになった」と話した。

報告書はまた、イスラム聖戦主義の反政府勢力ヌスラ戦線の施設で拘束された人も、拷問を受けていたとしている。

男性らは、裸にされて性器に電気ショックを与えられ、レイプされたと証言した。女性らはレイプすると脅されたとし、中部ハマの検問所でレイプされたと訴えた女性もいた。

拘束された人が裁判を経ないで、または政府の対テロ裁判所や軍事裁判での不公正な裁判や、反政府勢力の即席の手続きを経て、処刑されることもあったとする証言も出た。

拘束され死亡した人の正確な人数は不明だ。ただ、少なく見積もっても数万人が政府による拘束中に死亡したと、報告書は推定している。

軍病院での死者の記録、さまざまな集団墓地に埋められた遺体などが、推定の根拠だという。

政府とヌスラ戦線は、捕虜に対する拷問を否定している。

「何十万人という家族が、愛する人の運命に関して真実を知る権利がある」と、調査委のピニェイロ委員長は話した。

調査委は、ドイツで先週、人道に対する罪をほう助したとして、元シリア治安当局者に有罪判決が出たことを指摘。世界各国に対し、犯罪行為の責任を追及するよう求めている。

(英語記事 Tens of thousands of Syrians still missing - UN