そうした狭量さの背景には、池沢氏擁立の中心となった自民党の地方支部関係者(市議会議員)の大半が長きにわたり地元で事業を行ってきた自営業者で、サラリーマン世帯を中心とする新参者の利害には関心がないことがあげられよう。その上、「保守」政党を自任する自民党に所属していながら、確固たる国家観を有しているようには見えない。

 対する革新・リベラル派の活動家(市議会議員)は、その構図から排除された新参者を意図的に取り込もうとしてきたものの、その反国家的なイデオロギーを捨てきれないゆえに支持拡大には限界がある。

 自民党の地方支部関係者および革新・リベラル派の活動家を巡る事情は西東京市に限らず、隣接する武蔵野市においても同様だ。菅直人元首相の地元である武蔵野市においては、革新・リベラル派勢力が強く、6期にわたって武蔵野市長を務めた土屋正忠氏が自民党から衆議院議員となってから現在までの15年あまりにわたり、武蔵野市では革新・リベラル派主導の市政が続いている。

 こうした内向きの「ムラ社会」保守とイデオロギーにこだわる革新・リベラル派の対立構図の下で、最も割を食うのは保守的な心情を有する新参者だ。これらの人々は、新参者であるがゆえに「ムラ社会」から排除され、保守的であるがゆえにリベラル派にくみすることもできない。その結果、自らが納めた住民税の使途をチェックする機会が奪われてきた。

 この新参者の潜在的パワーを取り込もうとしたのが、シンボリックなテーマを掲げて支持を集める旧みんなの党や日本維新の会など「第三極」を掲げた政治勢力である。けれども新参者は地縁でつなぐことができないために組織化しづらく、シンボリックなテーマを掲げて支持を集めるという「ポピュリズム」の手法を取らざるを得なくなる。

 その結果、国会においては一定の勢力を確保する一方で、それに見合うだけの影響力を地方議会において確立できなかった。そのため、結局みんなの党は瓦解(がかい)し、日本維新の会も大阪府以外では存在感を発揮し得ていない。

 現時点において、保守的な心情を有する新参者が地方政治に自らの声を届ける術は存在しない。地方自治体の首長や議員の選挙における投票率が向上しないのは、そのためだ。

 もし、自民党の地方組織が新参者の声を拾い上げる努力をしたり、立憲民主党の地方組織が保守層に羽を広げる努力を行ったりすれば、新たな支持層とすることができるだろう。しかしながら、両党の現状を見る限り難しいと言わざるを得ない。
神奈川県逗子市長時代の平井竜一氏=2014年2月
神奈川県逗子市長時代の平井竜一氏=2014年2月
 こうした状況が続いてきたのは、サラリーマン家庭においては健康保険や年金に関する手続きが勤務先を通じてなされているため、市区町村とやりとりするのは自分の子を保育園や幼稚園、さらには公立の小中学校に通う時ぐらいであり、地方行政の実態に触れることが少なかったからだ。そのため、学生や単身者、あるいは結婚していても学齢期の子どもの居ない者が地方自治体のことを意識する機会はほとんどない。

 けれども、コロナ禍に端を発する在宅勤務の普及や外出自粛の風潮により、人々は自らが生活する場の環境を重視するようになった。当然のことながら、地方自治体の運営に関心を抱く者も増えていくに違いない。そうした動きに首長や議員、さらには職員が真摯(しんし)に向き合おうとしなければ、議員定数の削減は言うに及ばず、地方自治体の在り方そのものに疑いの目が向けられることになるだろう。