吉川圭一(グローバル・イッシューズ総合研究所代表)


 米フロリダ州オーランドで2月末に開催された保守政治行動会議(CPAC)において、トランプ前大統領が退任後初めて公の場で演説を行った。1月20日の退任以降、弾劾裁判などがあったが、この間、公での動きがなかっただけに発言が注目された。

 国際世論でも賛否が分かれたが、トランプ氏に対する弾劾裁判は、民主党だけではなく共和党主流派も彼の印象を悪化させるような映像や証言を持ち出すなど、今後政治活動をさせないようにする意図が色濃く表れていた。

 米世論調査会社エシュロンインサイトが弾劾裁判審理中に実施した調査では、共和党員の40%がトランプ氏に代わる党の「主導的発言者」が必要としており、昨年12月時点より14ポイントも増加している。

 また、トランプ氏の再出馬を望まないと回答したのも37%にのぼり、これも同期比で15ポイント増加。同調査会社は共和党主流派にもかかわらず、こうした結果が出たことは、共和党の一部がトランプ氏にネガティブな動きを見せていることの証左だ。

 だが、同時期に実施した中立系の英世論調査会社ユーガヴ(YouGov)の調査では、共和党支持者の約7割が、トランプ氏が新党を立ち上げるなら、そちらを支持すると回答し、ほぼ同じ比率で共和党員が弾劾に賛成すべきではないと答えた。

 実際、弾劾裁判の審理後に共和党内から弾劾に賛成した議員の多くが、地元の党支部などから厳しい非難決議を受けている。「トランプ氏には少なくとも同義的責任がある」と発言したマコーネル上院院内総務まで、地元から解任決議がなされている。

 また、共和党内でトランプ氏の落選運動を展開したリンカーン・プロジェクトなるものも内紛で崩壊。ボルトン元国家安全保障会議(NSC)担当補佐官に連なると思われるグループも離党する方針を示している。

 なお、2月下旬にYouGovが実施した最も評価する歴代の共和党系大統領の調査では、共和党員の36%がトランプ氏と回答し、そのほかは18%がレーガン、13%がリンカーン、11%がワシントン、としている。

 また、米国のテレビ3大ネットの一つであるNBCの世論調査によると、共和党を支持するブルーカラー有権者の割合は、過去10年間で12ポイント増加。その同期間に、民主党支持者であると認識するブルーカラーの有権者数は8ポイント減少した。これは黒人とヒスパニック(ラテンアメリカ系)では、もっと大きな変化が起きており、トランプ氏が開拓した新しい支持者と言っても過言でないだろう。

 このような「保守」の在り方の変化が反映されたのか、今回のCPACに招かれたのは、コットン上院議員のほか、クルーズ上院議員、デサンティス・フロリダ州知事、ホーリー上院議員、ポンペオ元国務長官ら。その一方で、参加を拒否されたのはトランプ氏と決別したペンス前副大統領とヘイリー元国連大使だ。

 特にペンス氏に関しては、彼が1月6日に強権を発動して、不正疑惑のある州の大統領選結果を各州議会に突き返さなかったのは、彼の首席補佐官が、グローバル石油財閥と繋がりが深かったため、といった話も出ている。マコーネル上院議員も中国マネーの問題で批判されている。

 そしてバイデン政権は、トランプ政権が定めた中国のハイテク関連技術への規制を緩めつつある。また、電力事業にまで中国企業を参入させようとしているだけでなく、通信アプリの一部のほか、大学などにある中国共産党の工作機関とされる孔子学院の規制も緩和したようだ。
新たな経済施策を発表するバイデン米大統領=2021年2月22日、ワシントン(ロイター=共同)
新たな経済施策を発表するバイデン米大統領=2021年2月22日、ワシントン(ロイター=共同)
 そのほか、経済を重視するためなのか、バイデン政権は新彊ウイグル自治区の人権問題への追及や、日米豪印戦略対話(QUAD)に関しても積極的ではないという。