2021年03月05日 10:59 公開

イタリア政府は4日、国内で製造された英オックスフォード/アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン約25万回分のオーストラリアへの輸出を差し止めた。欧州連合(EU)は1月下旬、加盟27カ国へのワクチン供給をめぐり、ワクチン製造業者が当初合意していた供給量を満たさない場合にEU域外へのワクチン輸出を停止すると発表していた。この新規制を適用したのはイタリアが初めて。

オーストラリアは「1回の出荷」がなくなっても、同国内でのワクチン展開に大きな影響はないとしている。

今回のイタリアの対応は欧州委員会の支持を得ていると報じられている。

ワクチンの域外輸出の差し止めについて、EUやアストラゼネカから公式コメントは出ていない。

オーストラリアでは先週、米ファイザー/独ビオンテック製ワクチンの接種が始まった。5日からアストラゼネカ製の接種を開始する予定だった。

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アストラゼネカは1~3月の間にEU加盟国に供給するとしていたワクチンのわずか40%しか用意できない状況だ。同社はワクチンの生産面で問題が生じているとしている。

イタリアのジュゼッペ・コンテ首相(当時)は1月、アストラゼネカ製とファイザー製ワクチンの供給の遅れは「容認できない」とし、2社の契約違反を非難した。

EUは予防接種計画を進めるペースが遅いと広く批判されている。

昨年6月に設置されたEUワクチン計画のもと、EUは加盟国を代表してワクチンの購入交渉を担っている。

イタリアの主張

イタリア政府は先週、欧州委員会に連絡し、ワクチンの出荷を阻止するつもりだと伝えた。

同国外務省は4日の声明で、2月24日にワクチン輸出承認の申請があったと説明。これまでの申請は、一部に科学研究用サンプルが含まれていたため許可されたが、今回は25万回分以上とかなり大規模なことから認められなかったとした。

また、オーストラリアは新型ウイルスの影響を受けやすい「ぜい弱な」国のリストに含まれておらず、EUやイタリアではワクチンが恒久的に不足していることや、イタリアやEU全体と比べてオーストラリアでは接種が進んでいることなどが、輸出差し止めの理由だと説明した。

オーストラリアの主張

オーストラリアはすでに約30万回分を確保しており、来月にはワクチンの現地生産を開始する予定という。

「国内生産は3月下旬から開始し、1週間で100万回分を供給することになる。順調に準備が進んでいる」と、同国のグレッグ・ハント保健相は述べた。

「この(イタリアの)出荷分は、今後数週間のワクチン提供計画には組み込まれていなかった」


<解説>力を誇示するイタリア――マーク・ローウェン、ローマ特派員

激しいワクチン戦争の中で、EUの重鎮が豪腕ぶりをみせている。

EUのワクチン接種計画では、ワクチン製造業者がEU域外に輸出する場合、許可を申請しなければならないが、輸出が差し止められたのは今回が初めてだ。

新たにイタリアの首相に就任したマリオ・ドラギ氏は、欧州中央銀行(ECB)の元総裁として欧州で影響力を持つ人物だ。EU首脳とのビデオ会議では、アストラゼネカがEUと契約していたワクチン供給量を最大70%削減することに激怒し、規則が厳格に適用されるべきだと主張した。

ドラギ首相は予防接種計画の強化を優先している。それを実現するためには同国やEUは必要なあらゆる手段を取ることを、ドラギ氏は明確に示そうとしている。


(英語記事 Italy blocks AstraZeneca shipment to Australia