さらに言えば、日本の国防を第一に担う自衛隊は11年の災害対応でもそうだったが、予備役が招集されても同時に複数地域へ出動可能な数的余裕はない。

 もちろん、災害支援には政府関係者を含め警察や消防、ボランティア、国内外のNPO(非営利団体)やNGO(非政府団体)、民間企業などさまざまな人々が関与する。

 それぞれに欠かせない役割があるとはいえ、最初の段階で最も重要な役割を果たすのは軍事的組織が有する、迅速かつ大規模な対応能力であり、上記の組織が取って代わることはできない。この詳細については、拙著『トモダチ作戦 気仙沼大島と米軍海兵隊の奇跡の“絆”』を参照されたい。

 端的に言えば、東日本大震災が良い例だが日本に駐留する在日米軍であれば、大規模災害時における自衛隊の能力を補填および支援する役割が果たせる。

 現状、静岡県から果ては九州の宮崎県までの沿岸地域に被害を与えるとされる南海トラフ地震のシナリオでは、津波に襲われた後の空港の滑走路で自治体と米軍が名刺交換をするのでは手遅れだ。だからこそ、事前に協議を通じて取り決めをしておくことが肝要である。

 06年に私が上記の提言をした際は、残念ながら顧みられることがなかったものの、11年以降は私が沖縄県の政務外交部次長を務めていた際に米海兵隊との間で、静岡県や愛知県、高知県をはじめ南海トラフの影響を受ける地域において、さまざまな関係者や組織団体との関係を築くことができている。

 そもそも次の大規模災害は、いつ発生するかは分からない。だからこそ、こうした関係を広げ、発展していくために一日一日を大切にしなければならないが、時の経過、特に被災地の復旧・復興が進むにつれて、日本では災害への緊張感が薄くなったと感じている。まだまだ行わなければならないことはたくさんある。この部分の詳細については、拙著『次の大震災に備えるために―アメリカ海兵隊の「トモダチ作戦」経験者たちが提言する軍民協力の新しいあり方』を参照してほしい。

 多くの人は、大規模災害が自分の地域で発生しなければ問題ないと思うかもしれないが、それは違う。震災などの影響は、直接的そして間接的に及ぶということを理解しなければならない。決して人ごとではないのだ。

 言うまでもないが、大規模災害は経済的な影響が大きく、国内のサプライチェーンや生産、流通、販売などが寸断もしくは中断される可能性が高く、商品などのコストの上昇が考えられる。

 首都直下型地震や東南海地震の場合は、被害が特に深刻になるだろうし、被災地の復興のための増税もあり得る。また、人的被害も深刻になるだろう。震災に家族や親戚、友人や同僚が巻き込まれる可能性もある。
被災した青井阿蘇神社の前で、集められたごみなどを撤去する自衛隊員=2020年7月、熊本県人吉市
被災した青井阿蘇神社の前で、集められたごみなどを撤去する自衛隊員=2020年7月、熊本県人吉市
 ほかにも避難者など国内難民の問題も考えられる。日本一の人口を抱える東京に関しても例外ではなく、首都直下型地震が起きれば、コロナ禍を機に増え続ける郊外への人口流出傾向は加速するだろう。

 東京都は人口密度が非常に高いうえ、人口自体も日本最大の1千万人を超える。食糧やインフラコストの維持が莫大であるため、支援が行き渡る可能性が低く、避難者や難民が大勢生まれるのは容易に予想できる。