
2021年03月12日 15:40 公開
タイ政府は12日、英アストラゼネカとオックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスワクチンの展開を遅らせると発表した。同ワクチンについては接種後に血栓ができたという報告が出ているものの、この症状についての証拠はない。
タイではこの日からワクチン接種事業を拡大する予定だったが、中止された。
これまでにデンマークやノルウェーなど数カ国が、アストラゼネカ製のワクチン使用を取りやめている。
これまでに欧州で500万人がこのワクチンを接種しているが、血栓ができたとの報告がこれまでに30件あったという。
欧州医薬品庁(EMA)は11日、このワクチンが血栓の原因だという証拠はないと発表。「接種することによるメリットが今なお、リスクを上回っている」と強調した。
アストラゼネカは、このワクチンの安全性は臨床試験で厳密に研究されたとコメントした。
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タイの新型ウイルスワクチン委員会の顧問は記者会見で、「アストラゼネカのワクチンの品質は良いが、いくつかの国が接種延期を要請した。わが国もそうする」と話した。
一方で同国の公衆衛生省は、欧州で流通しているワクチンとタイが輸入したワクチンは別の生産分だと明らかにしたほか、アジア人からはこれまで血栓の問題がみられていないと述べた。
タイは2月24日に11万7300回分のアストラゼネカ製ワクチンを輸入。同時に中国製のコロナヴァクも20万回分、入手している。
2月28日のワクチン接種事業開始以来、3万人がタイでコロナヴァクを接種している。タイ政府は今後も接種事業は続けるとしている。
他国の対応は?
イギリスの医療製品規制庁(MHRA)は、アストラゼネカのワクチンが問題を起こしたという証拠はなく、今後も接種を続けていくと述べている。
MHRAによると、イギリスではこれまでに1100万人がこのワクチンを受けている。
30万回分をすでに輸入しているオーストラリアも、このワクチンを使い続けるとしている。
ピーター・ダットン豪内相は、「これは安全なワクチンだと、医師たちは現時点で非常にはっきりと提言している。我々は接種事業を継続したい。みんな冷静になるべきだ」と話した。
このほか、フィリピンや韓国でも引き続きアストラゼネカ製のワクチンが使われる予定。
一方、デンマークとノルウェー、アイスランドは一時的にこのワクチンの使用を見合わせている。
オーストリアは予防策として、いくつかの生産分を使わない措置を取った。
アストラゼネカ製のワクチンの仕組み
オックスフォード/アストラゼネカのワクチンは、チンパンジーがかかる風邪ウイルスを遺伝子操作したもの。人間に接種してもこの風邪にかからないよう無害化されている。
ワクチンは「スパイクたんぱく質」と呼ばれる、新型コロナウイルスの一部の「設計図」を含む。これを体内に接種することで、体内はスパイクたんぱく質を生成し始める。すると人体の免疫系がこれを攻撃することを学習し、やがて実際に新型コロナウイルスが体内に入ったときには、同じようにこれを攻撃できるようになる。