2021年03月13日 9:27 公開

英ロンドン南部クラパムで今月3日夜、帰宅途中の会社員サラ・エヴァラードさん(33)の行方が分からなくなった事件で12日、ロンドン警視庁の現職警官が誘拐と殺人の疑いで訴追された。

現職警官の訴追に先立ち、ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監が10日、英南東部ケント州の森林で人の遺体が発見されたと発表した。この記者会見の際にディック氏は、多くの女性が「心配していて、怖い思いをしているだろう」と述べた。警察は12日、発見された遺体が、サラさんのものと確認されたと発表した。

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チャットアプリ「WhatsApp」のグループや会議アプリ「Zoom」を使って、イギリス各地の女性たちが、この事件を受けてについて話し合っている。その中で多くの女性が、街なかを1人で歩いて自分がどういう経験をしてきたか、怒りやいらだちや、恐怖を共有している。

「私はとても若いころ、自分を守るためには自分の行動を変えなくてはと学びました」。グレイス・ジェサップさんはBBCラジオ1の番組「ニュースビート」にこう話した。

「たくさんの女性が、『もううんざりだ、もう我慢ならない』と言ってます。それに私たちは、そんなの知らなかったと男性たちがいまさら衝撃を受けていることにも、なんとなくうんざりしているんです」

「14歳くらいのころからずっと、これが私にとっての現実なので。学校の制服姿で道を歩いていると、通りすがりの相手に嫌がらせされるのが」

グレイスさんは友人と出かけるときは必ず、お互いに帰宅したらテキストメールを送りあうことにしている。

「もし連絡がなかったら、友達は私の無事を確認してくれます。誰も守ってくれないと、私たちは学んでしまったので」

グレイスさんはかつてクラパムに住んでいた。サラ・エヴァラードさんが消息を絶った場所の近くに。

「彼女は私だったかもしれない。私の友人の誰かだったかもしれない」と、グレイスさんは言う。

クラパムの緑地「クラパム・コモン」で、サラさんのため13日夜に行われる追悼集会にも、参加するつもりだという。

「私にとっては単なる集会ではなく、みんなが集まって支えあう場所になります。今回のことで若い女性はみんな傷ついているので」

「なので私たちが集まって、自分がどういう気持ちでいるのか確認するのは、大切だと思います。そしてもちろんその結果として、彼女のことを思うのが大事だと思います」

あまりに家に近くて

デイジー・エドワーズさんは、サラさんが最後に確認された場所から、歩いて5分のところに住んでいる。数カ月前にクラパムに引っ越してきたデイジーさんも、13日の集会に行くつもりだ。

町のあちこちで、サラさんを探す張り紙を目にしていた。

「自分に対して本当にショックで。人探しのポスターを目にしていたのに、ちゃんと見ていなくて、真剣に受け止めていなかったことに。もしかして、鈍感になっていたのかも」

デイジーさんは、どこかへ1人で歩く時には、注意するようにしている。特に夜には。

「誰かにつけられているみたいに感じたら、振り返って相手の顔を見たりします。それか、立ち止まって電話に出たり。電話に出るふりをしたことも何度もあります」

ソーシャルメディアでは、自分に何ができるか尋ねる男性もいる。1人で歩く女性が安心していられるために、男性はどうすれば良いのか。

これに対して多くの女性が、道で女性の後ろを歩いたり、女性を追い越して歩いたりする際には、女性からたっぷり距離を開けて欲しいと答えている。

一方で、女性を襲うような男性は全体のほんの一握りだと指摘し、「#NotAllMen(男全員というわけじゃない)」というハッシュタグを使う人たちもいる。

「でもそこには問題があって、女性には勝ち目がないんです」とデイジーさんは言う。

「全ての男性が女性を襲うわけじゃないんだから、男だからといって全員をそういう風に扱わないでほしいと、私たちは言われているわけです。けれども同時に、女は自分で自分を守るようにとも言われる」

「自分で自分を守るために、私たちは全ての人を、この人は自分を襲うかもしれないと見なくてはならない。『そうですね、男全員が悪いわけじゃない。推定無罪の原則で全員を扱いましょう』なんて言ってしまったら、そういう時にこういう事件が起きるんです」

「それでいざこういう事件が起きると、『もっと注意すべきだったのに』と女性は言われてしまう」

「だから本当に、きついです。そういう態度は、社会に組み込まれたものだと思うので」

無視されたら諦めないと

シャイさんは、表を1人で歩いていて怖いと感じたことが何度かあると言う。

たとえば2日前、昼ごろ外を歩いていて。

「男の人が2人くらいいて、私はヘッドホンをつけていました。何か言うのが聞こえて、『おいこっち来いよ』とか言っていたので、無視して歩き続けたんです」

「するとその男たちは、『こっち来いよ、おい、お前に言ってるんだ。お前に言ってるんだよ』って」

「こんなの間違っている。誰かの気を引きたいのだとしても、それで相手に無視されたら、諦めないと」

「もしこれが夜のことで、私がヘッドホンをつけていたら、『ヘッドホンをしてたのが良くない』とか言われるんでしょうか? それか、あの道を歩くべきじゃなかったとか」

「はっきりさせておきたいんですが、全ての男の人が問題だとは言ってません。そんなことはまったく思っていません」とシャイさんは言う。

それでも、パンデミック対策のロックダウン緩和に伴い、外出の機会が増える事態に備えて、すでに安全確保の対策を進めているという。

「今朝も友人と電話していて、いざという時のために使えるスマホのアプリをググって探していたんです。それにお互いにどうやって連絡し合うかも決めてあります」

シャイさんはイングランド中部バーミンガム在住だ。サラさんの件は、国中に衝撃を与えていると話す。

「私は仕事でよく出張するので、国中あちこちに行きます。ロンドンだけの問題じゃないと思う。バーミンガムの問題でもないと思う。全体的な問題だと思います」

(ストーカー被害や性犯罪・性暴力被害などの相談窓口を紹介する、日本政府の内閣府男女共同参画局のサイトはこちらです

(英語記事 Sarah Everard: Women share their fears of walking alone