柿沢未途(衆院議員)

 先日施行された中国の国内法である中国海警法は、国際法で認められていないにもかかわらず、領海の外側の接続水域や排他的経済水域(EEZ)、そして大陸棚までもが自国の「管轄海域」として航行が認められている他国の船舶を検査したり、航行を制限する権限を中国海警局に勝手に与えている。

 あまつさえこの法律では、「管轄海域」で「国家主権、主権的権利、管轄権」が「不法に侵害された、または不法に侵害される緊迫した危険がある時」には、武器使用を含む一切の措置がとれるとしている。

 これは中国自らが批准国でもある国連海洋法条約を無視した国際法違反の野蛮な国内立法であり、国際社会の規範を逸脱した非常識な立法と断じざるを得ない。

 そして中国海警法が射程に入れていると思われるのが、いわゆる「第一列島線」の内側の海域全体を中国の「管轄海域」として、中国海警局ならびに中国海軍の支配下に収めようという狙いである。

 第一列島線とは、中国がこれまた勝手に引いた海軍・空軍の戦力展開の目標となる地図上のラインであり、対米防衛ラインとして設定されているものである。日本列島の九州・沖縄から台湾、そしてフィリピンに伸びている。

 中国としては仮に対米戦争になったら日本列島を含む第一列島線を最前線として、米軍と正面衝突する腹づもりだということになる。

 そのために第一列島線の内側の日本海や東シナ海を中国のいわば内海として日本やその他の国から奪い取り、掌中に収めてしまおうというのだろう。これはとんでもない思惑であり、このような中国のたくらみは絶対に阻止しなければならない。

 そこで重要になるのが台湾だ。第一列島線を日本列島から延ばした延長線上にあるのが、台湾であるからだ。そして中国は台湾を自国の一部とみなし、武力統一の選択肢を捨てていないどころか、最近でも香港のような「一国二制度」を断固として拒絶する蔡英文政権に対し、武力による威嚇をたびたび加えている。

 今年7月は中国共産党の結党100周年を迎えるため、記念すべき節目の年である。習近平国家主席としても、2期目の任期満了を迎える来年秋の党大会後に最高権力者の地位を保ち、長期政権を続けられるよう国内でその布石を着々と打っているとされる。

 だからこそ、エポックメイキングな偉業として尖閣諸島や台湾に手を出してくるのではないかと警戒する観測は絶えない。

 つい先日の今月9日、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が米連邦上院軍事委員会で証言し、「中国は今後10年以内、いや6年以内に台湾を併合しようとすると信じる」と、中国による台湾進攻の差し迫った可能性に警戒を露わにしている。

 また、今月には米国のブリンケン国務長官、オースティン国防長官が初来日にあたり、米国務省が報道官声明を出し、尖閣諸島を念頭に「米国はいかなる東シナ海の現状の一方的な変更、またはそれら島々の日本の施政権を損なう試みに反対し続ける」と、強いコミットメントを発している。

 このように、いわば台湾と日本は共通の地政学的脅威にさらされている「運命共同体」と言っても過言ではない。

 そもそも有事の際の米軍との協力について規定した1999年の周辺事態法(現重要影響事態法)は、96年の米クリントン政権時の「台湾海峡危機」の発生を受けて、台湾有事の発生を想定して制定された法律であったはずだった。

 そのため、仮に台湾有事となれば、日米は相互に協力して事態対処を進めることになるのは間違いないだろう。だが、それ以前に台湾有事はわが国のシーレーンに致命的な影響を与え、沖縄を含む南西諸島の島嶼(とうしょ)防衛をも脅かし、「周辺事態」どころか「日本有事」そのものだとも言える。
訓練に参加した米軍三沢基地所属のF16戦闘機=2018年4月、航空自衛隊千歳基地
訓練に参加した米軍三沢基地所属のF16戦闘機=2018年4月、航空自衛隊千歳基地
 もちろん台湾の蔡英文政権も有事に対する備えを怠ってはいない。現代型F16戦闘機を66機、M1A2エイブラムス戦車108両、地対空ミサイルや対艦ミサイルなどを米国から購入する大型契約をたて続けに結んでいる。

 最新鋭装備の購入契約の総額は174億ドル(約1兆8千億円)と台湾の年間国防予算を上回る規模にのぼっており、対中配慮から台湾への武器売却に消極的だったオバマ政権時と比べて大きな変化である。もっとも、それが中国の反発を引き起こし、先述のような数々の威嚇行動にも結びついている。