田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 総務省幹部への接待問題をめぐり、3月15日の参院予算委員会に東北新社の中島信也社長とNTTの澤田純社長が参考人として出席した。

 総務省は中央省庁再編で自治省、郵政省、総務庁が統合して2001年に誕生した。総務省の不祥事を伝える報道では、かんぽ生命問題の処分内容を日本郵政の鈴木康雄上級副社長(当時)に漏らしたことで、19年に鈴木茂樹前事務次官が事実上更迭されたことが記憶に新しい。なぜ、処分内容を事務次官がリークしたのか。

 小泉政権で郵政民営化が実現したが、民主党政権になって事実上の「再国有化」になってしまった。本来は完全民営化で、国は保有する旧郵政グループの政府保有株を全部売却することを目指していた。しかし、民主党政権時代の法改正で、その株式売却が「義務」から「努力義務」にされたことで、今も国が旧郵政グループの最大の株主のままである。

 この経済的な「癒着」は、さらに人事上の癒着を生んだ。先の日本郵政側の鈴木氏は元総務省の事務次官である。つまり、典型的な天下りだ。郵政民営化の再推進と同時に、天下り規制の厳格化が必要だろう。

 では、今回の問題はどうだろうか。やはり総務省の裁量権が注目されている。通信・放送に関する許認可の裁量が大きすぎることが問題だ、と評論家の原英史氏や嘉悦大教授の高橋洋一氏らは厳しく指摘している。

 特に電波の割り当てが今回の問題の背景にもある。東北新社が放送法の外資規制に違反しているにもかかわらず、衛星放送事業に認定を受けた問題は注目された点だった。なぜなら東北新社側は国会で「総務省の担当部署と面談し、報告した」と発言している。事実であるなら総務省側の瑕疵(かし)だが、接待問題以外でも、両者の日ごろからのなれ合いが「見逃し」に至った可能性がある。

 日本郵政へのリーク問題を思い出してほしい。総務省は自らの裁量権の大きさに安住し、規制される側は普段からの「交流」で安閑としていたのだろうか。ここはぜひ、事実の解明をしてほしいところだ。また、国家公務員倫理規定違反の疑いのある接待については、もちろん東北新社やNTTは真摯(しんし)に反省するべきだろう。
参院予算委員会で答弁する参考人のNTT澤田純社長(右)左は菅義偉首相、武田良太総務相ら=2021年3月15日、参院第1委員会室(春名中撮影)
参院予算委員会で答弁する参考人のNTT澤田純社長(右)左は菅義偉首相、武田良太総務相ら=2021年3月15日、参院第1委員会室(春名中撮影)
 国会の論戦では、一貫して野党は菅義偉(すが・よしひで)首相の長男をクローズアップすることに躍起である。3月15日の参院予算委員会で立憲民主党の福山哲郎幹事長は「本当はコロナのことをやりたくていっぱい準備してたんです。東日本大震災から10年だからエネルギーのこともやりたくて、すごい準備してたんです。こんな(接待)問題起こるからできないじゃないですか!…コロナついてお伺いします」と首相への質問で声を荒らげたが、さすがに問題を矮小(わいしょう)化しすぎている。

 また、国家公務員倫理規定を破ったとなれば問題だが、両社長への質問を見ていると、お茶や食事をするだけでも「接待」という言葉で疑惑をかきたてるような雰囲気が作られている。