2021年03月16日 11:53 公開

英オックスフォード大学と英製薬大手アストラゼネカが開発した新型コロナウイルスワクチンを接種した人に血栓が出たとして、欧州連合(EU)の主要加盟国の一部が同ワクチンの接種を取りやめたことを受け、世界保健機関(WHO)は15日、同ワクチンの接種を停止しないよう各国に求めた。WHOはワクチン接種と血栓の発生の関連を示す証拠はないとしている。

オックスフォード/アストラゼネカ製ワクチンをめぐってはドイツやフランス、イタリア、スペインなど複数の国が、安全性を確認する間、予防措置として同ワクチンの接種を一時停止している。

ワクチンの安全性に詳しいWHOの専門家たちは16日、同ワクチンの接種について協議する。

欧州医薬品庁(EMA)も16日に会合を開き、18日にも結論を出す予定。EMAはかねて、このワクチンの使用を継続すべきだとしている。

欧州では、ワクチン投与後に血栓が発生したケースがいくつか確認されている。

しかし専門家たちは、一般に通常報告される血栓の発生件数と変わらないと指摘する。

アストラゼネカによると、欧州とイギリスでは約1700万人が接種を受けており、先週の時点で報告があった血栓の発生件数は40件未満だったという。

WHOや他の専門家は何と?

WHOのクリスティアン・リンドマイヤー報道官は、WHOがアストラゼネカ製ワクチンに関する報告内容を調査していると述べた。

「WHOが事例を完全に把握し次第、調査結果について、また現行の推奨事項に変更が生じる場合には、直ちに一般市民に通知する」

「今日の段階では、これらの事例が同ワクチンによるものだと示す証拠はない。命を救い、新型ウイルスによる重症化を食い止めるためにワクチン接種計画を継続することが重要だ」

現在、血栓に関する調査を進めているEMAは、ワクチン接種は継続可能だとしている。

イギリスの医薬品規制当局も、ワクチン接種が血栓を引き起こすことを示す証拠はないとし、ワクチン接種を求められた際には接種するよう国民に呼びかけた。

オックスフォード/アストラゼネカ製ワクチンを開発したオックスフォード・ワクチン・グループ代表のアンドリュー・ポラード教授は、BBCラジオ4の番組「トゥデイ」で、「欧州における接種の大部分はここイギリスで実施されている。そしてイギリスでは、血栓の発生件数が増えていない。これは非常に心強い証拠だ」と述べた。

<関連記事>

各国の対応

ドイツ保健省は15日、同省医薬品規制当局パウル・エールリヒ研究所(PEI)の勧告に基づき、オックスフォード/アストラゼネカ製ワクチンを直ちに停止すると発表した。

「アストラゼネカ製ワクチンの接種に関連した静脈血栓症の症例が新たに報告されたことが、今回の判断につながった」と、イェンス・シュパーン保健相は説明した。

「新たに報告されたこれらの事例を踏まえ、ポール・エーリッヒ研究所は本日、状況を再評価し、予防接種の停止と分析継続を推奨した」

シュパーン氏は今回の決定は「政治的なものではない」とし、「我々は全員、この決定による影響を重々承知している。安易にこの決定を下したわけではない」と付け加えた。

それから間もなく、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、EMAから新しい提言があるまで国内での同ワクチンの接種を停止すると発表した。

「我々には科学と保健当局からの情報を得て、欧州戦略の一環として取り組むというシンプルな指針がある」

イタリアの医薬品庁はEMAの決定が出るまでの間、ワクチン使用禁止措置を全国に拡大。スペインのカロリナ・ダリアス保健相は、少なくとも2週間はワクチンの使用を停止すると述べた。

こうした措置は、オランダが少なくとも29日までワクチン使用を停止すると表明してから1日もたたないうちに発表された。


アイルランド、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、ブルガリア、アイスランド、スロヴェニアもワクチン接種を一時的に停止している。コンゴ民主共和国(旧ザイール)やインドネシアは接種の開始時期を延期している。

オーストリアなど欧州の一部の国も予防的措置として接種を停止している一方で、ベルギーやポーランド、チェコ、ウクライナは接種を継続するとしている。

ベルギーのフランク・ファンデンブルック保健相は、同国では現在、感染者数が多いことから接種を中断する余裕はないと説明した。

タイでは安全性への懸念からワクチン展開が一時的に遅れていたが、16日からワクチンを使用するという。

カナダのジャスティン・トルドー首相は、アストラゼネカ製を含め、国内で投与されている全てのワクチンの安全性を保健の専門家たちが保証したと明らかにした。

アストラゼネカの主張

アストラゼネカは、同社のワクチンによって血栓ができるリスクが高まるとの証拠は存在しないとした。

同社によると、EU加盟国とイギリスでワクチン接種を受けた人から、深部静脈血栓症(DVT)が15件、肺塞栓が22件報告されている。

「この規模の人数の中で自然発生すると予想される血栓よりもはるかに発生数が少なく、使用許可が下りている他のCOVID-19(新型ウイルス感染症)ワクチンを接種した場合と同程度だ」

「このパンデミックの性質上、個別の事例に注目が集っている。市民の安全を確保するため、我々は使用許可が下りている医薬品の安全性モニタリングについて標準以上に取り組み、ワクチンに関連する事例を報告している」と、同社のアン・テイラー最高医療責任者は述べた。


<解説>疑念を持つのは当然――ミシェル・ロバーツ保健編集長

世界中で膨大な数の人がワクチンを接種する中、ワクチンとは無関係なものが原因で病気になる人もいる。

アストラゼネカ製ワクチンの使用が一時停止されたのは、同ワクチンの接種が危険だからではない。ここ最近、ワクチンを接種した人の一部に血栓がみられたため、その原因を専門家が調査できるよう時間を確保するためだ。

ワクチンを接種してから間もなく病気を発症した場合、ワクチンがなんらかの影響を与えたのではないかと疑念を持つのは当然だ。

しかし、ワクチンとの関連性などを示す兆候や証拠は見つかっていない。

イギリスでは、1100万人以上がすでにアストラゼネカ製ワクチンを少なくとも1回接種しており、死者数が平年予測を超える「超過死亡」や、血栓が発生した様子はない。欧州の医薬品規制当局も、ワクチンに効果があるのは明らかだとして接種を支持している。COVID-19は人を死に至らしめる恐れがあり、ワクチン接種はそうした命を救うことになる。


(英語記事 Continue using AstraZeneca vaccine, says WHO