小倉正男(経済ジャーナリスト)


 米国の新型コロナ禍に対する経済対策だが、「家計支援」というか、「個人支援」に重点が置かれている。米国が行っているのは、個人への一律の現金給付(直接給付)というシンプルなやり方である。財政支出は半端ない規模にならざるをえない。だが、それはいわばフェアに最も近い、国民に不満や不平等を生まないからにほかならない。

 家計支援、あるいは個人支援では、バイデン大統領、それにトランプ前大統領とも手法は一致している。ほとんど差異らしいものはない。米国民の多くも現金給付を望んでおり支持している。2人の大統領とも破格の“大盤振る舞い”で要望に応えている。

 バイデン大統領の1・9兆ドル(207兆円)の新型コロナ対策法案(アメリカン・レスキュー・プラン)では、4千億ドル(43兆6千億円)相当が「家計支援」、あるいは「個人支援」にあてられている。

 家計への支援の中身だが、1人あたり1400ドル(15万2600円)の現金給付が行われる。富裕層を対象外とする所得制限は強化されたが、一般の4人家族では5600ドル(61万400円)の支給になる。

 「失業給付」は、当初案は失業保険に上乗せして週400ドルだったが、週300ドルに縮小された。失業給付は失業者に限定されるが、これも結果としては家計支援、個人支援につながる。失業給付も2千億ドルを超える予算規模だ。

 家計支援でいえば、バイデン大統領の1400ドル支給は3回目になる。トランプ前大統領は、20年3月に1人当たり1200ドルを給付、さらに12月に600ドルの給付にサインしている。3回の家計支援を合計すると、米国民は1人当たり3200ドル(34万8800円)、4人家族では1万2800ドル(139万5200円)の給付となる。

 トランプ前大統領の場合は、失業者に対して、失業保険に上乗せして週600ドルの追加給付を行っている。この追加給付は、失業者急増のピークの2020年3~7月に実施された。米労働統計局によると、20年4月にはレイオフ(一時解雇)などで非農業雇用者が前月比2050万人消滅した。過去最大の雇用減=失業者増を記録した(4月=失業率14・7%、5月=13・3%)。

 期間工など一部失業者などでは、「失業しているほうが仕事を得て働いているより収入が多い」という現象が生まれた。失業保険と週600ドルの追加支給で、合計すると週1千ドルに匹敵する収入を得ることができた。「就業意欲を失わせる」と揶揄(やゆ)された。厚遇過ぎるというわけである。
小規模企業を重点支援する方針を発表するバイデン米大統領=2021年2月22日、ワシントン(ロイター=共同)
小規模企業を重点支援する方針を発表するバイデン米大統領=2021年2月22日、ワシントン(ロイター=共同)
 トランプ前大統領としたら、新型コロナ禍の状況でも“大盤振る舞い”で懐が潤っているのによもや大統領選で遅れをとるなどあり得ないと思っていたに違いない。バイデン大統領にとっても、トランプ前大統領に負けてはいられない。景気過熱でインフレが懸念されると批判を浴びても大型経済対策「アメリカン・レスキュー・プラン」に踏み込んでいる。