米国が、家計給付、あるいは個人給付という支援を行っているのは、不満や不平等感といった「分断」を生まないからとみられる。(サンダース上院議員など民主党左派は、新型コロナが終息するまで毎月2千ドルの現金給付を主張している)。米国でも、中小企業の従業員雇用に対する助成や運輸、医療業界への支援などが行われている。だが、これらはレアケースで限定されたものになっている。

 企業、業界などに助成金などで支援を行えば、従業員の家計や個人に行き渡る途中で消滅してしまう可能性もある。特定の業界・業種に支援が偏れば、業界・業種間で大きな不平等が生まれる。家計や個人をベースに直接給付するのがいちばんフェアで分かりやすい。いわば、「分断」の中で国民にとって軋轢(あつれき)の少ない、揉めないやり方になる。

 家計給付は、富裕層を除いて国民の85%内外に支給される。経済を活性化させる最大ファクターである消費への“原資”になる。家計給付をやっているのだから、日本のようにGoToトラベル、GoToイートなどの特定産業を使った景気刺激策を考える余地はない。

 米国は世界最多の新型コロナ感染者を出したが、ようやく急速に終息傾向を見せている。ワクチン接種でも先行している。そこに加熱気味といえる経済対策が追加される。バラまきによるインフレ懸念への指摘はあるが、景気は急速に立ち直る可能性を持ち始めている。

 米国景気の好転機運やインフレ懸念から10年物国債利回りが1・5後半~1・6まで急上昇した。長期金利の上昇気配は、バブルの兆候を見せていた株式市場を痛撃して大きな波乱を呼んでいる。直近の米国雇用統計では、2月の非農業部門雇用者数は37万9千人増(1月は4万9千人増)に好転。失業率は6・2%と高止まりしているが、大枠では景気回復の兆しが見える。

 問題は日本経済の先行きである。中国は経済ではすでに順調に再スタートを決めている。米国は遅れをとっていたが、経済のエンジンを吹かすとなれば世界経済には大きなプラス要因になる。米国、中国の経済大国は、合計すれば世界のGDP(国内総生産)の4割強を占めている。世界の経済覇権を相争っているその米国、中国が揃って経済を再始動すれば、日本経済にもプラスに作用するのは間違いない。

 だが、日本経済は「アベノミクス」でゼロ金利政策まで動員しても、デフレを克服できなかった低成長体質を引きずっている。体質改善は進んでいないばかりか、長期に渡るゼロ金利の恩恵で「ゾンビ企業」も温存されているきらいがある。資本主義の本質といえる新陳代謝は進んでいない。

 現状は一般に新型コロナ禍できわめて保守的な企業マインドになっており、工場、商業ビルなどの設備投資は減退している。「コロナ後」をにらんだ事業投資はなされているようには見えない。

 日本の名目GDP成長率は、通常ベースでいうと1~2%成長できれば上出来の部類だ。2021年は、新型コロナによる緊急事態宣言の長期化もあって、何とか回復軌道に入るのは年後半になる。日本経済が2019年レベルに戻るのは、早くて2022~23年になるとみられる。
※画像はイメージ(ゲッティイメージズ)
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 日本経済が新型コロナ以前のレベルに復旧するには、米国、中国の回復に依存して後追いする格好にならざるをえない。だが、それとて先行きに何が起こるか分からない。一筋縄ではいかないのが常だ。