新型コロナ禍の米国では、企業のレイオフなどで大量解雇が表面化したが、大量失業のピーク時に「起業ラッシュ」という現象が起こっている。企業には死ぬ権利もあり、誕生する権利もある。「起業ラッシュ」の中から、“千三つ”あるいは“万三つ”かもしれないが、新しい成長産業が生まれてくる。米国の「GAFAM」(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)は、いずれもそうしたガレージ企業から誕生している。

 解雇された失業者の多くは、成長分野に労働力として移動する。市場メカニズムの作動による米国のダイナミズムは、新型コロナ禍でも健在だ。新型コロナ禍という未曾有の危機だからこそダイナミズムが草の根ベースで巻き起こっている。大量失業の反面で「起業ラッシュ」現象が見られるところに米国資本主義の根底的な強さがある。

 日本の場合は、企業が雇用調整助成金などの国家支援を受けて、「潜在失業者」を企業内に抱えている。失業率は現状でも2・9%。ただし、非正規社員、パートなどは雇い止めなどが行われており恩恵は及んでいない。企業はもらえるものはもらって、本社ビルなど売れるものは売ってキャッシュ化し、生き残りを図っている。「起業ラッシュ」のような動きは顕在化していない。

 あくまで「緊急避難」とはいえ、雇用調整助成金は失業者を表面化させない政策である。米国の失業者増加を前提とした失業給付上乗せとは対照的だが、雇用調整助成金は失業を企業内に押しとどめる作用をもたらしている。日本型ということなのか、市場メカニズムではなく、国が労働力を管理し、むしろ労働力の流動化を止めているのが現状だ。

 日本と米国の対比でいえば、家計給付の在り方は対極をなしている。さらに対極にあるのは、「逐次投入」「小出し」の特徴が顕著であることだ。政治の決意、決断という問題なのか、あるいは民意という問題なのか。

 日本では、緊急支援として、最初に中小零細企業、個人商店などの事業継続に持続化給付金が支給された。そして国民1人当り10万円の給付金(予算12兆円)の家計支援がそれに続いている。

 結局、国が景気テコ入れ策として傾斜していったのはGoToトラベル、GoToイートといった特定業界への支援である。緊急事態宣言下では時短営業の飲食店に特定して一律6万円の協力金による支援がなされている。家計、個人への直接給付が十分ではないという下地があるため窮乏する特定業界を救済するという名目で景気テコ入れ策を追加せざるをえなかった。

 麻生太郎財務相は、2度目の家計への現金給付について「国の借金を増やすのか」「子孫にツケを回すのか」と否定的だ。家計、個人に対する直接給付は国にとっては巨額支出になる。それが何よりも否定的な理由とみられる。だが、米国はインフレ懸念が惹起されるほどの巨額な財政出動で現金給付を実行している。そうしたものは政治の決意、決断の問題だ。
衆院本会議で財政演説をする麻生財務相=2020年6月
衆院本会議で財政演説をする麻生財務相=2020年6月
 米国の1・9兆ドルの経済対策による分厚い家計給付とは比べようもない。コロナ禍のいまの日本の経済対策が、日本の「コロナ後」の経済にどう影響するか。日本はデフレを克服できているわけではない。一筋縄ではいかない。コロナがいずれ終息するとしても、日本経済には「withデフレ」という宿痾(しゅくあ)の大敵が再び待ち構えていることを忘れてはならない。