2021年03月17日 11:53 公開

新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製ワクチンについて、欧州各国は安全性がより明確にされるよう求めている。ヨーロッパでは同ワクチンの使用を見合わせる国が増えているが、そうした判断への批判も出ている。

アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発したワクチンをめぐっては、接種した人の一部で血栓が生じたとの報告が出ている。

フランス、ドイツ、スペイン、イタリアはこれまでに、同ワクチンの使用を停止。欧州連合(EU)の医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)が18日に公表する調査結果を待つとしている。

一方、EU加盟国の中でもポーランドやベルギーなどは、同ワクチンを使い続けている。

そうした中、EMAは16日、アストラゼネカ製ワクチンについて、利益をもたらすことを「確信している」とした。

EMAトップのエマー・クック氏は、一部の国で問題視されている血栓は、一般に人々の中で見られがちなものだとした。

「現時点では、ワクチンがそれらの症状の原因となっていることを示すものは何もない」

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フランスのエマニュエル・マクロン大統領と、イタリアのマリオ・ドラギ首相は16日、共同声明を発表。EMAの見解を「心強い」とした。

世界保健機関(WHO)の専門家らは同日、会議を開催。広報担当は、報告されている血栓とアストラゼネカ製ワクチンの関連を示す「証拠は皆無」だと強調した。

WHOは各国に、ワクチン接種を停止しないよう強く求めている。ヨーロッパの多くの国は、新型ウイルス感染者の増加傾向を抑えられずにいる。

イギリスでは1100万人以上が、アストラゼネカ製ワクチンの接種を1回以上受けている。死者数が平年予想を超える超過死亡や血栓の発生は、これまでのところ確認されていない。

欧州各国の対応

ヨーロッパでは13カ国ほどがアストラゼネカ製ワクチンの使用をストップしている。最も早かったのはデンマークで、ノルウェーとアイスランドが続いた。その後、ドイツ、フランス、イタリア、キプロス、スペイン、ラトヴィア、スウェーデンも使用を停止した。

EUの3大国であるドイツ、フランス、イタリアは15日、EMAの調査結果を待って、使用再開を判断すると表明。使用停止は「予防的措置」だとした。

フランスの免疫学者で政府諮問委員会トップのアラン・フィッシャー氏は、「非常にまれで気がかりな症例が出ており、今回の停止と分析はもっともだ」、「時間の無駄ではない」と同国の公共ラジオで述べた。


オーストリアは、アストラゼネカ製ワクチンの一部の使用を停止。ベルギー、ポーランド、チェコ、ウクライナは、同ワクチンの接種を続けるとしている。

血栓と同ワクチンの関連を示す証拠は確認されていない。EMAはこれまで、血栓はワクチン以外が原因となっている可能性が高いとの見方を示している。

「利益がリスクを上回る」

アストラゼネカ製ワクチンの接種停止の判断は、一部の政治家や医師らが批判している。

ドイツの伝染病学者で、中道左派政党・社会民主党の保健問題の広報担当となっているカール・ラウターバッハ氏は、接種停止について、正当な理由があるとしたものの、政治的な判断でもあると、同国の公共ラジオで述べた。

「私は今すぐでもアストラゼネカのワクチンを接種する。これまでの事例に基づけば、ワクチン接種の利益は、リスクを大きく上回る。高齢者は特にそうだ」

ドイツ野党の自由民主党は、政府の判断は国内全体のワクチン接種を遅らせたと批判。緑の党の保健担当は、アストラゼネカ製ワクチンを使い続ける判断もあったはずだと述べた。

ポーランドのワクチン接種当局のトップ、ミハウ・ドボルチク氏は、同ワクチンの使用を見合わせている国について、「合併症の訴えに関するメディア報道が引き起こしたパニックに屈している」と話した。

欧州の感染状況

ヨーロッパでは多くの国が、新型ウイルスの感染者の急増を抑えられず、規制を強化している。ワクチン不足による接種ペースの減速も懸念されている。


ドイツのロベルト・コッホ研究所(RKI)は16日、前週の感染者数が20%増加したとして、国内の感染は「飛躍的に」増えているとした。

フランスのジャン・カステックス首相は同日の議会で、国内で3種の変異株が広がっていることについて、「第3波のようなもの」に見舞われていると発言。「アウトブレイクは延長戦に入っている」と述べた。

ノルウェーでは、首都オスロが感染対策の制限強化を発表。イタリアとオランダはロックダウンの規制を強めている。

EU域内では、新型ウイルスの死者は約57万5000人に上っている。パンデミックで経済も大きな打撃を受けている。

(英語記事 Europe divided over AstraZeneca jab suspensions