2021年03月17日 13:21 公開

ポール・リンコン科学編集長、BBCニュース・ウェブサイト

火星に数十億年前に流れていた水はどこへ行ったのか。これは長年の謎だ。

しかし科学者は今、答えを見つけたかもしれないと考えている。火星の水の大半は、地殻の中に閉じ込められてしまったのだと。

太古の水は、火星の岩石の中に鉱物の形で残っているという。

この発見は、第52回月・惑星科学会議で議論され、学術誌「サイエンス」でも発表された。

研究では火星を周回する宇宙船や探査車、隕石などから集めた測定値を使用した。

その後、コンピュータによるシミュレーションで、火星の水がどのように失われていったかを観察した。

40億年以上前の火星は温暖で、水も存在し、大気もおそらく現在よりも濃かった。水は川になって流れ、岩の間に渓谷をつくり、クレーターに貯まっていたとみられている。

火星の地下100~1000メートルの地層には、火星全体を覆うほどの水を貯めておける能力があったかもしれない。

それから10億年後、火星は現在のような冷たく荒廃した惑星へと変わっていった。

ロンドンの自然史博物館に所属するピーター・グリンドロッド博士(惑星科学、今回の研究には不参加)は、「火星には昔、もっと水分があったことは長年知られていたが、その水がどこに行ったのかはいまだに問題になっている」と説明した。

グリンドロッド博士はBBCニュースに、「火星の大気の研究から、水分の一部は宇宙に逃げてしまったことが分かっている。地表のすぐ下の氷から、一部は凍ったことが分かっている」と述べた。

宇宙へ逃げた水

地球には磁気圏があるため、大気が宇宙へ逃げるのを防いでいる。一方で火星の磁気圏は弱く、水分でも惑星の外へ逃げてしまう。

しかし、現在の火星の大気に含まれる水素の割合から見るに、水の行き先はそれだけではないはずだという。

研究共著者のカリフォルニア工科大学のエヴァ・リンガン・シェラー氏は、もし現在の水素の減少率が過去と同じなら、「このルートで失われる水はほんのわずかだということになる」と説明する。

つまり、水の大半はどこか別のところに行ってしまったはずなのだ。

研究チームによるコンピュータ解析の結果、火星に元々存在した水の30~99%は鉱物となり、火星の地殻に埋め込まれたことが分かった。

共著者のベサニー・エールマン教授はこれについて、「火星ミッションから得られたデータを調査した結果、水が変質した証拠があちこちにあり、稀少ではことではないことがはっきりした」と述べた。

また、「地殻が変化する時に液体の水が取り込まれ、水酸化した鉱物の中に隠されてしまい、事実上、閉じ込められてしまう」と説明した。

研究チームは、火星の水の大半はノアキス紀と呼ばれている41億~37億年前に失われてしまったと考えている。

火星の気候変動

アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査プログラムを率いるマイケル・マイヤー博士は、「火星探査は元々、水のありかを探すのが大きな役割だった。地質学や気候、惑星の生命にとって重要な役割を果たしているからだ」と語った。

「今回の研究は、火星に過去どれくらいの量の水があったのか、どのように失われ、今はどこにあるのか、そういったことを理解するのに非常に重要なものだ」

グリンドロッド博士もこれについて、「この新しい研究によって、火星では大量の水、おそらく水の大半が、岩石に閉じ込められていたかもしれないことが分かった。水酸化のプロセスによって、火星全体を水深1000メートルで覆うほどの大量の水を貯めておくことができる」と述べた。

「液体の水のほとんどは、火星が形成されてから15億年で失われてしまっただろう。しかし現在、探査車『パーサヴィアランス』が調査を続けているジェゼロ・クレーターなどから、地表面で水酸化した鉱物の証拠が見つかっている」

「初期の火星の気候は今なお惑星科学の分野で最も重要なトピックの一つだ。今回の研究は、水が失われた過程を知る助けになる」

(英語記事 Vast amount of water may be locked up on Mars