2021年03月19日 11:11 公開

新型コロナウイルスの英アストラゼネカ製ワクチンについて、欧州医薬品庁(EMA)は18日、「安全で有効」と結論づけた。これを受け、欧州連合(EU)主要国は同ワクチンの接種を再開する。

アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発したワクチンをめぐっては、血栓との関連を懸念し、EU加盟の13カ国が接種を見合わせていた

EMAは同ワクチンを検証し、この日、血栓リスクの増加とは「関係がない」と発表。EMAトップのエマー・クック氏は記者会見で、「これは安全で有効なワクチンだ」と述べた。

この見解を受け、ドイツ、フランス、イタリア、スペインの各国は、同ワクチンの接種再開を表明した。

接種を再開するかどうか、再開する場合は時期がいつになるか、EUの各加盟国が決める。スウェーデンは判断まで「数日」が必要だとした。

世界保健機関(WHO)は同日、アストラゼネカ製ワクチンの接種を続けるよう各国に求めた。19日には独自の検証結果を発表する。

WHOの検証は、脳血栓を中心に、異常な血流障害が見られた少数の症例を対象とした。

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アストラゼネカ製ワクチンの使用を中断したことで、ヨーロッパではワクチン接種のペースが落ちることへの懸念が生じていた。接種ペースについては以前から、ワクチンの供給不足により悪化が心配されていた。

フランスのジャン・カステックス首相は18日、フランスについて新たな措置を発表。パンデミックは明らかに拡大しているとし、感染の「第3波」はいっそう現実味を増したと述べた。

55歳のカステックス氏は、19日午後に自身もワクチン接種を受けると表明した。

EMAの見解

EMAのクック氏は18日の記者会見で、アストラゼネカ製ワクチンについて、「COVID-19(新型ウイルス感染症)による入院や死亡から人を守ることの利益は、あり得るリスクを上回る」と述べた。

クック氏はまた、EMAの専門家委員会がアストラゼネカ製ワクチンについて、「血栓の(中略)全般的なリスク増加と関連はない」と判断したと述べた。

同時に、同ワクチンと「まれで普通ではないが非常に深刻な少数の血栓障害」との関連を、EMAとして完全に否定するものではないと説明した。

クック氏によると、EMAの専門家委員会は、リスクがあることを製品情報に明記し、注意を喚起するよう勧告した。今後、追加調査を始めるという。

クック氏は、「私なら明日ワクチン接種を受ける」と表明。「ただ、接種後に私の体に何か起こった時、どうすべきかは知っておきたい。私たちが今日言っているのは、そういうことだ」と述べた。

ドイツのイエンス・シュパーン保健相はEMAの見解を歓迎。「55歳未満の女性に静脈血栓症のリスクがあると伝えられるように、医師はそのことを知っておくべきだ」と話した。

欧州各国の対応

ヨーロッパの有力国は、アストラゼネカ製ワクチンの接種を見合わせた際、「予防的措置」だと説明していた。

フランスの免疫学者で政府諮問委員会トップのアラン・フィッシャー氏は、「きわめて異例で気がかりな症例がいくつか出ているため、今回の停止と分析は適切だ」、「時間の無駄ではない」と、フランスの公共ラジオで述べていた。

ドイツは、接種後に珍しい血栓が生じた事案が少数あったことから接種を中断。EMAの結論を待った。

オーストリアなどは、アストラゼネカ製ワクチンの一部の使用を停止。ベルギー、ポーランド、チェコは、同ワクチンの接種を続けるとしてきた。

アストラゼネカ製ワクチンの接種停止の判断は、一部の政治家や医師らから批判された。

ドイツ野党の自由民主党は、政府の判断は国内全体のワクチン接種を遅らせたと批判。緑の党の保健専門家は、アストラゼネカ製ワクチンを使い続けることもできたはずだと述べた。

英バーミンガム大学で医薬品の安全性を研究しているアンソニー・コックス博士は、「まずい判断がヨーロッパ中に次々と広がった」とBBCに話した。

アストラゼネカの反応

アストラゼネカは、同社のワクチン接種によって血栓のリスクが高まることを示す証拠はないとしている。

同社は今月8日の時点で、EUとイギリスで接種を受けた1700万人以上の中から、37件の血栓の報告を受けたとしていた。

こうした数字について同社は、「この規模の人数で自然発生が予想される血栓よりもはるかに少なく、使用が許可されている他のCOVID-19ワクチンを接種した場合と同程度だ」と述べていた。

アストラゼネカと共同でワクチンを開発した、オックスフォード大学ワクチン研究グループを率いるアンドリュー・ポラード教授は15日、「ヨーロッパのワクチン接種の大部分が実施されているイギリスで血栓症が増えていないことを示す、非常に明るい証拠」があるとBBCに話していた。

イギリスのマット・ハンコック保健相は16日、「規制当局の言うことを聞いて」、できるだけ早期に「接種を受ける」よう国民に求めた

(英語記事 EU countries to resume rollouts of AstraZeneca jab